BrainSquall

競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

【第89回東京優駿回顧】クラシックをクラシックに完結させた日本競馬史上最大の推し活は最終章ロンシャン編へ

イクイノックスが背後に迫るラスト数十メートル。ウマ娘効果でファンの裾野が広がって、コロナ禍が落ち着き、ダービーに大観衆戻ったこのタイミングで、全盛期の武豊はそこにいた。ライトも古参も全ての競馬ファンを巻き込んで、日本競馬最大の推し活は、武豊の物語を完結させるべく、悲願の凱旋門賞へ突き進んで行く。

平成の戦歴だな。ダービー前日に改めて出馬表でドウデュースの過去走を眺めると、そこにはクラシックというよりも、ノスタルジーすら感じさせる字面が並んでいる。1レースの消耗度が激しく、外厩での調整が勝負を分けるようになって久しい令和の競馬において、2歳で朝日杯FSを勝って、弥生賞皐月賞を経て日本ダービーは3歳春の3戦目。鞍上は全て武豊。しかも皐月賞は後方からの差し届かず。サンデーサイレンス全盛時代のダービーへの試走を思わせるパフォーマンスは、前目からの追走力を問われる昨今のトレンドから見れば、むしろ距離延長を嫌った消極策のようにも思えた。一方のイクイノックス。低迷期から抜け出した武豊にもう一花咲かせたキタサンブラックの初年度産駒は東スポ杯から異例の長期休養明けの皐月賞で外枠から前々を追走して2着。年明けからJRA重賞に嫌われていたルメールも先週のオークスの鮮やかな勝利で肩の力が抜けての参戦となるだろう。ただ馬体を見ても、調整過程のコメントからもダービーを勝つには1つ2つ間に合わない印象は最後まで否めなかった。シンプルにトレンドを考えると、今年こそのリーディングを狙って快走する川田を配したダノンベルーガを本命視するのは当然の流れ。共同通信杯から皐月賞は馬場の悪い内枠を通って、4着。ダービー上位人気の中では好枠ともいえる12番枠で、いつも慎重な堀師の強気なコメントをみてしまうと、この数週間の上がり目という点では最上位のように思えた。人気どころではジオグリフも気になる存在ではあったが皐月賞は全てがハマっての勝利。いくら一段上のクラスに上がって日本競馬における名騎手の一人に仲間入りしたともいえる福永祐一をもってしても、この血統、この馬体で日本ダービーを勝ちきるイメージまでは持てなかった。この10年日本競馬を引っ張ってきたディープインパクト産駒が全く馬券に絡まないとも考えにくいことから、◎ダノンベルーガ。2着にディープインパクト産駒で、3着にイクイノックス、ドウデュース。グラスワンダー応援枠でピースオブエイトという予想で当日を迎えた。

第89回日本ダービーは真夏を思わせる快晴。ちょっと前から競馬を嗜むファンが思い起こすならキングカメハメハのダービーだろうか。当日まで予定がわからなかったため、3年連続のテレビ観戦。SNSにあがる風景を見ながら、来年こそは現地に戻りたいなと考えつつ、フロンターレの試合(負け)を見てると、あっという間にパドックの時間に。SNSではダノンベルーガの歩様が話題に。究極の仕上がりか、仕上げすぎの反動か。結論はすぐそこにゲートインの時間を迎えた。

18番枠の最後にイクイノックスが収まる。人気どころは綺麗なスタート。デシエルトが積極的に前に。昨今の競馬のトレンドは全ての馬が末脚のレベルが上がったことで、前半のポジション取りが如実に結果に繋がる。ゴールで差し切れるポジションに、いかに人気馬を射程に入れながら、もしくは邪魔されないようにしながらレースが出来るか。速い流れで1,2コーナーを回ると隊列が目に入る。比較的縦長となった馬群の中団。当代イチとも言える日本人騎手二人のガツガツしたポジション獲りは、真ん中にダノンベルーガ、外にジオグリフ。枠の差もあってか川田に軍配は上がっているように見える。しかし福永祐一も決して楽をさせないようにという意思が見える外からの追走。立派になった福永祐一。最近毎週言ってるような気もするが、それでもキングヘイローの話を持ち出すのは許して欲しい。そんなことを考えているとカメラはその後ろに。

思わずTwitterに呟いてしまったが、人気馬2頭の真後ろを単独追走。弥生賞皐月賞を試走に徹することが出来た信頼と胆力があってこそ為しえた「勝てる、勝ちたい馬の1つ後ろの位置取り」。点と点が線に繋がる。それは全盛期の武豊にはそう簡単に許されなかった最高のポジションで、脳裏に駆け巡るのはアドマイヤベガウマ娘からの競馬ファンにサービスが過ぎない?この展開なら怖いのはイクイノックスと意識を画面に振ると、想定よりも2つは後ろを追走。これはもしかすると?

4コーナーを回って一気に馬群は凝縮する。外からダノンベルーガにプレッシャーをかける福永祐一。その外で一呼吸置いて、直線に入ってから冷静に馬を誘導する武豊。残り400。追い出しにかかる人気馬。もがくような走りのダノンベルーガとジオグリフを置きざりに弾けるドウデュース。残り200であっという間に先頭に立つ。うわーサンデーサイレンスだ。呟くまもなく残り100外からイクイノックスが追いすがる。やっぱり来たのはルメール。1馬身まで迫られたところでアップになったテレビに映ったその姿は、昨今の「馬を動かす」追い方ではなくて、「馬の走りの邪魔をしない。限界まで人馬一体なスマートな」追い方で、それはまさに全盛期の武豊の最後の10完歩。「武豊凱旋門賞を勝つこと」が夢であると公言する松島オーナーがもたらした50代にしてダービー6勝目のゴールの瞬間であった。

朝日杯から弥生賞で始動。鞍上を武豊に固定して皐月賞を後方からの競馬で試走とした上で、ダービーまでは在厩調整。血統、育成はともかく昨今のトレンドに背を向けたとも言えそうな過程で手に入れたダービー制覇。表に出る松島オーナーの推し活ぶりを考えると、ストーリーだけならフィクションのようではあるものの、終わってみれば戦略の勝利。ディープインパクト産駒の活力が衰え、抜けた馬が減った群雄割拠のタイミングでは他と同じことをしても勝ちは手に入らない。マイルを使って手に入れた追走力。有力各馬がフィジカル、メンタルに不安を抱えた中で、王道路線と在厩調整を歩めたタフさと陣営のケア。結果的には皐月賞で手の内を明かさずに走りきったことで磨いた末脚とマークの分散。全ては馬主、厩舎、騎手の信頼が点と点を線で繋いで呼び込んだ流れではあるわけで、ただの良い話で終わらせずに、心底拍手で称えたい。そしてアンチ武豊から入っても競馬歴が25年を超えるとこう言ってしまうのである。「やはり競馬は武豊だ」

当然ながらレース後は順調なら凱旋門賞へ挑むことが報道されている。凱旋門賞といえば、タフさを問われる馬場状態になることも多いわけで、普通に考えればマイルで勝つようなドウデュースには適性があるとは言いづらい。それでも日本競馬のレベルが凱旋門賞を勝てるレベルにあることは、もう十分な程に証明されているわけで、じゃあ日本馬がこれだけ挑んで勝てないのは何故かと言われれば、当日の天気と展開にメッチャ左右される日本馬不利なガチャゲーだからである。もうだったら単純に日本で一番強い馬で挑むのが正着となる可能性も十分あって、ドウデュースにはその資格がある。レースを走りきるまでどうなるかはわからないのが競馬ではあるが、ここまで流れを呼び込んだ松島オーナーに近代日本競馬のエンディングを賭けて信じたいところではある。ほんともう勝たせてくれ。そしてやっぱり凱旋門賞を最初に勝つ日本馬の鞍上には武豊がいて欲しいし。

2着以降も少々。イクイノックスは結果的に位置取りの差が出てしまったが、ポジションを獲れない&差し切れないのはメンタルとフィジカルがダービーにやはり間に合わなかったなという印象。体型的にも父と同じで本格化は秋以降でも不思議ではなく、評価を下げる必要はない。3着アスクビクターモアはディープインパクト産駒の意地を見せた形。この2年ほどのダービーオークスは意外と内枠、前有利とはならないトラックバイアス。弥生賞でドウデュースを完封した先行力とスタミナはやはり本物。菊花賞筆頭と考えたい。4着ダノンベルーガは正直思ったほど走れなかった。パドックでは歩様の悪さや骨瘤も指摘されていたことから、仕上げすぎてしまったと考えるべきか。ドウデュースが特別なだけでやはりこの時期のハーツクライは難しい。無理をする陣営ではないので、こちらも来年以降に本格化か。

ポストコロナを見据えて、正常化の第一歩を踏み出した中で行われた第89回日本ダービー。古参ファンからすれば、キズナキタサンブラックで一度フィナーレを迎えたとおもった武豊と日本競馬の物語が再点火したことは感慨深く、また武豊という日本競馬史上最高の騎手のスター性が松島オーナーのとんでもない推し活によって、ウマ娘あたりから入っているライトファンに間に合ったことは、とても素晴らしかったことのように思える。ダービーから凱旋門賞へ。そしてダービーからダービーへ。今日の日本ダービーを少しでも楽しんでくれた人がドウデュースの挑戦と、来週からはじまる新馬戦で次のダービー馬を探しに、少しでもハマってくれたらなという思いである。ちなみに二人目の武豊推し活オジさん、みんな大好きウマ娘サイバーエージェント藤田晋オーナーの期待馬は、来週6/4土曜日に武豊を鞍上にデビュー予定。父はドウデュースと同じハーツクライのエゾダイモン。みんな見てくれよな。そしてそういう話題馬コケるのも競馬だったりするのだ。

2022-2023POG開催のお知らせ

今年も例年通りの開催です。

参加募集

まずは前年度参加者の参加意思を確認します。Twitterにてご連絡ください。5/29までに連絡がない場合は不参加扱いとなります。その後新規参加者を募集します。

賞金ルールについて

POGスタリオンに準じて、海外成績は算入されません。

1部2部の区分けについて

1部の下位7位〜10位は自動降格。2部の1位〜4位は自動昇格。1部の6位、2部の5位はポイントが上位の1名を1部とします。次シーズンに不参加者が出た場合は基本順位を繰り上げて対応する方針ですが、1部10人、2部10人とするために場合によって、昇格者や降格者が増える場合もあります。

ドラフト

1部はリアルタイムドラフトのつもりです。参加できない人は代理を立ててください。2部はリスト提出制です。原紙はこちらから。締め切りは6月4日0時00分です。宛先はbrainsquallあっとgmail.comへ。2部は6月4日21時から、1部は22時からドラフト(他参加者と同順位競合分のじゃんけん)を行います。実況方法はTwitterのスペースです。2部についてはメールで5回分のじゃんけんを5セット送ってもらってこちらで結果を調べる形です。例:ぐーぱーぱーちょきちょき (これを5セット分送ってください)
じゃんけんに負けた場合はリストの下順位の指名馬が繰り上がります。これを各参加者のの持ち馬が10頭ずつになるまで繰り返します。
注意点1:ドラフトには参加せずにいることは可能ですが出来るだけ参加ください。
注意点2:万が一リストの持ち馬が尽きてしまったときはその場で追加していただくことになります。いない方は後回しにされ、後日指名されていない馬の中から選ぶことになります。
提出リストに鍵かけたい方はどうぞー。

参加者一覧

1部

○前年1部1位:kokuo_
○前年1部2位:kohi_k2
○前年1部3位:black_altair
○前年1部4位:yuta0210
○前年1部5位:chabata_k
○前年2部1位:shadow_rockin7
○前年2部2位:ryz
○前年2部3位:urisan_uma
○前年2部4位:sripura
○前年2部5位:airedale(14409P)

2部

○前年1部6位:samdare0(13785P)
×前年1部7位:ikur
○前年1部8位:maybaelectric
○前年1部9位:karasi_gj
○前年1部10位:sweep611
○前年2部6位:katuryoku
○前年2部7位:Southend
○前年2部9位:americanbosss
○前年2部9位:sunnydayturf
○前年1部10位:j_relaunch
○前年1部11位:niftyheart

ikurさんが不参加のため、1部、2部10人で実施します。

【第88回東京優駿回顧】新時代の予兆にほろ苦く待ったをかける福永祐一のストーリー強度

去年、そして今年のオークスに引き続き無敗の二冠のかかる形となったダービー。1番人気は当然のごとくエフフォーリア。以下は皐月賞組は勝負付けは済んだとばかりに、サトノレイナス、グレートマジシャンと別路線組が人気上位となった。昨年関東リーディングを奪取し、勢いに乗る若武者、横山武史をベテラン達どのように包囲するのかに注目が集まる形で第88回日本ダービーはゲートインを迎えた。

直前の輪乗りでは流石に表情に硬さの窺えた横山武史とエフフォーリアだったが、ゲートはスムーズ。全馬収まると綺麗なスタートとなった。最内のエフフォーリアも勇気をもって出していく構え。戦前の予想通りにバスラットレオンがハナを奪いにいき、2番手はタイトルホルダー。隊列自体は比較的早めに落ち着き、淡々とした流れになるかと思われて向こう正面に入ったが、ここでバスラットレオンが想定以上にペースを落としたのが、今年のダービーの1つめのアヤとなる。絶好のポケットを取れたと思われたエフフォーリアは少し噛んでしまったのも目立ったが、何よりここでサトノレイナスが外枠で壁を作れずにじわじわとポジションを上げていく。前半の1000mは1.00.3で流れるもこの緩急にグッと馬群が詰まった形に。レース後のコメントからはマイルの経験しかなかったサトノレイナスが我慢できなかったということになるが、レイデオロの記憶も新しい騎手達が好位に上がるルメールを放っておけるはずがない。結果として、4コーナー手前から急激にペースアップする展開に。直線に入るとサトノレイナスが馬場の真ん中から進出。エフフォーリアも前が空いたことで半ば強制的に1番人気としてスパートを余儀なくされる。外にヨレながらも先頭に立つエフフォーリア。早めの仕掛けで止まるサトノレイナス。いったんは勝利は無敗の皐月賞馬に傾いたに見えたが、馬場をまっすぐ伸びてきたのがシャフリヤール。ラスト50mの激しい叩き合いの結果、ゴールの瞬間のクビの上げ下げでハナ差先着したのはシャフリヤール。二冠馬誕生、横山武史のダービー制覇は寸前でこぼれ落ちる結果となった。

勝ったシャフリヤールは毎日杯1着から4戦目でのダービー制覇。何より今日は福永祐一の落ち着いた手綱捌きが光った一戦となった。3コーナー手前では内外あれどエフフォーリアと同じような位置取りで上がりタイムも同一の33.4。しかし共同通信杯での敗戦を生かした形で、焦らずにゴール板まで一気に脚を使い切る形でのスパート。本人は「馬の力に助けられた」とのコメントだが、負けることを怖がらずに能力を出し切るエスコートができたのは、ダービーの勝ち方を知ってしまった騎手の手腕。自身のキングヘイローのダービーと違って、堂々とした90点以上のレースぶりを見せた若武者に、経験の差で壁として立ちはだかった上に、エピファネイアの借りをエピファネイア産駒に返してしまうのだから、これが競馬の非情でもあり面白いところ。どうしても多感な競馬初心者の時期を1997年スタートにしてしまった身としては、日本競馬の主人公はサンデーサイレンス武豊なれど、裏主人公は福永祐一なのである。天才二世の生まれで関係者のバックアップがありながら、凡庸な才能しかなく、下手くそと言われ、失敗をし続けてきても、諦めずに理論と努力を重ねて、三冠馬ジョッキーとなり、ダービー3勝目で若手の壁として立ちはだかる「福永祐一のストーリー」には、愛憎入り交じった感情移入から逃れられない。もちろん「経験値」に還元されたワールドエースエピファネイアリアルスティールは堪ったものではないだろうが、ここまでくるともうこれは競馬の神様が福永洋一にとんでもなり借りを作ってしまったがゆえの、日本競馬の運命とまで言えるのかもしれない。いやでも競馬始めたときは、二十数年後に福永祐一にここまで感情揺さぶられるとは思ってなかったよ、マジで。シャフリヤールは444キロとディープインパクト晩年にして、似たサイズ感でのダービー制覇。兄アルアイン、馬体からみても今後距離が伸びて良いようには見えないが、父亡き今となっては2000m路線に絞って、種牡馬価値を上げて欲しいという思い。菊花賞に出てきたら嫌いたい。

2着のエフフォーリア。横山武史には悔しくて悔しくて堪らないであろう敗戦。レースぶりは堂々としたもので決して騎乗ミスで負けたわけではなかった。ただ90点の騎乗をしても勝てない、そして次にいつ勝てるのかもわからないのがダービーの怖さ。結果論としては皐月賞で上手くいきすぎたことで「負けパターン」を感じられずに無敗でダービーを迎えてしまったことで、自分からレースを支配するような競馬を出来なかったことが敗因か。800mの瞬発力勝負となるのであれば、自ら動いてじわっと加速する流れに持って行きたかったところだが、内枠も経験もそれを許さなかった。これが武豊であれば皐月賞で「脚を測る試走」ができるのであろうが、結果を出し続けなければいけない立場の若手騎手にはそれが難しい。逃した結果は大きすぎたし、軽々しく次のチャンスがあると言えるわけではないが、それでもこれから10年20年。偉大なる父を持つという点では似た境遇の横山武史のストーリーを見守り続けたい。

3着のステラヴェローチェは力を出し切った3着。貴重なバゴ産駒の牡馬だけにどこかで大きなタイトルを獲って欲しい。まだまだ変わる余地があろう血統だけに秋以降の飛躍に期待。4着グレートマジシャンは素質を評価されたが、間に合わなかった。ただこの血統、パンとしたらいいつつ、パンとするイメージがわかないので、今後も人気するようなら嫌い続けたい。サトノレイナスはマイルまでの経験しかなかったことで、緩急のあるラップに戸惑ったのが最大の敗因か。ワンターンの1800と1600にそれほどの違いが出るイメージはわかなかったが、ダービーに挑むのであればやはり緩急あるラップと1800以上の経験は重視するべきと言うのが今回の教訓か。

騎手も血統も歴史が動くかに思われた2021年のダービーではあるが、終わってみればまだまだベテランとディープインパクトの意地を見せられた結果となった。ただ何を言ってもディープインパクトの時代は終わるし、今日の敗戦は横山武史の貴重な経験となった。今日のこのダービーが20年後のダービーにどう繋がるのか、毎年毎年の積み重ねに期待しながら、来週から始まる2022年のダービーへのスタートを楽しみたい。

【第82回優駿牝馬】マイネル悲願の初クラシック制覇に日本競馬のストーリーイベント完結を見る

二年連続で無敗の二冠、しかも白毛桜花賞馬の参戦に盛り上がった2021年のオークス。1番人気は当然のことながらソダシ。2番人気は三冠×三冠のアカイトリノムスメ。離れた3番人気にユーバーレーベン。金子馬二強ムードでゲートインを迎えた。

スタートすると大方の予想通り、クールキャットがハナに立つ素振りを見せて、ソダシも好位に取りつく構えを見せるが、大外からステラリアが掛かり気味に先頭へ。結果的に隊列が落ち着いたのが2コーナーを回ったあたり。想定よりも速い流れになったことが、結果的には最後まで影響したように見えた序盤の動きであった。向こう正面ではソダシが4番手。アカイトリノムスメは先行集団の馬群の中で脚を溜める。いったん流れは落ち着いたかが見えたが、外からジワッとユーバーレーベンがポジションをあげると、更にその前のステラリアとスライリーは4コーナー入り口では外から先頭を被せる形。例年のオークスよりスタミナを問われる流れとなることが確定的になって直線を迎える。直線に入ると抜け出そうとするソダシの後ろから一呼吸待って、アカイトリノムスメが上がってくる。しかし締まった流れを外から力強く伸びてきたのはユーバーレーベン。内から迫るアカイトリノムスメと外から追い込むハギノピリナを押さえて、見事ユーバーレーベン@デムーロマイネル悲願のクラシック制覇を成し遂げた。

勝ったユーバーレーベンはデビュー2戦目で札幌2歳Sではソダシの2着に善戦するも、その後あと一歩が届かない競馬が続いてきたゴールドシップ産駒。しかし春の大舞台で見事に逆転劇を見せつけた。前述の通り、マイネル軍団悲願のクラシック制覇は、3月に逝去した総帥、岡田繁幸氏に捧げる勝利。改めて血統を眺めてみれば、曾祖母マイネプリテンダーは氏がニュージーランドから購入した牝馬。繁殖入り後はブライアンズタイムとの配合で重賞馬を複数送り出し、クラブを支えた。ロージズインメイは何とかして種牡馬で当たりを引こうと執念の導入の1頭。そしてステイゴールドゴールドシップは氏が期待をかけ続けた種牡馬である。悲願を達成するのにこれ以上ないほどの、まさしくマイネルの結晶ともいえる配合であった。

当初の相馬眼、育成手腕もサンデーサイレンスの導入、日本競馬の猛スピードの進化の中で、晩年は陰ってしまったように見えていた。意地でも種牡馬で当たりを引こうとするあまり、牝系や騎手起用、戦略については、正直迷走している感はあった。それでもひたすらに競馬に賭けた情熱と語り口は、日本の偉大なホースマンの中でも突出したキャラクターであり、この数十年の競馬を盛り上げ続けたプレーヤーであったことは間違いない。今でも目を瞑れば浮かんでくる、独特な語り口調と悔しさを内包した発言の数々。そんな氏の夢が最後に期待をかけていた本馬で叶うのだから、これ以上ない一つの物語の結実である。

そして勝利に導いたのがデムーロというのも、また役者として際立つ。311の年にヴィクトワールピサで制したドバイWC、天覧競馬でエイシンフラッシュと見せた敬礼が記憶に残る天皇賞。社台ノーザンの結晶ともいえるドゥラメンテで制したダービー。技量だけで言えば、ルメール武豊には及ばないところであり、良いとき悪いときの起伏の激しい騎乗が目立つ騎手ではあるが、「日本競馬のストーリーイベント」には唐突に顔を出すのが、このデムーロという男である。まあ思い起こせば岡田氏がクラシック制覇に届く直前にそれを阻止したのはダイワメジャーに乗っていたデムーロであったわけだが、レース後のインタビューも含めて、どこか憎めない絵になる男。妙に昭和と浪花節を感じさせるイタリア人である。

2着アカイトリノムスメはルメールの騎乗は冴えていたが、最後の最後少し伸びを欠いた。エリザベス女王杯あたりで勝ちそう。3着ハギノピリナは展開と馬場が向いたか。しかしキズナ産駒もトライアルだけでなく、人気薄のヒモでは今後も継続的に押さえることが必要そう。8着に破れたソダシは距離も展開も向かなかった。秋華賞では巻き返せるのではないだろうか。

岡田繁幸の父、岡田蔚男氏に向けて名付けられたグランパズドリームのダービー2着から35年。ノーザンファームの3歳世代重賞19連勝で始まり、金子馬による超良血白毛馬による桜花賞制覇で、王道オブ王道で進んできた2021年3歳牝馬路線の、最後の最後がドイツ語で「生き残る」と名付けられたユーバーレーベンの勝利で完結し、岡田繁幸の悲願が成し遂げられるのだから、競馬は敗者に厳しく、辛いことも多いが、時に優しく美しい。久々に「競馬のストーリー」に胸を打たれたオークスであった。

2021-2022POG開催のお知らせ

今年も例年通りの開催です。

参加募集

まずは前年度参加者の参加意思を確認します。Twitterにてご連絡ください。5/28までに連絡がない場合は不参加扱いとなります。その後新規参加者を募集します。

賞金ルールについて

POGスタリオンに準じて、海外成績は算入されません。

1部2部の区分けについて

1部の下位7位〜10位は自動降格。2部の1位〜4位は自動昇格。1部の6位、2部の5位はポイントが上位の1名を1部とします。次シーズンに不参加者が出た場合は基本順位を繰り上げて対応する方針ですが、1部10人、2部10人とするために場合によって、昇格者や降格者が増える場合もあります。

ドラフト

1部はリアルタイムドラフトのつもりです。参加できない人は代理を立ててください。2部はリスト提出制です。原紙はこちらから。締め切りは6月5日0時00分です。宛先はbrainsquallあっとgmail.comへ。2部は6月5日21時から、1部は22時からドラフト(他参加者と同順位競合分のじゃんけん)を行います。実況方法はTwitterです。2部についてはメールで5回分のじゃんけんを5セット送ってもらってこちらで結果を調べる形です。例:ぐーぱーぱーちょきちょき (これを5セット分送ってください)
じゃんけんに負けた場合はリストの下順位の指名馬が繰り上がります。これを各参加者のの持ち馬が10頭ずつになるまで繰り返します。
注意点1:ドラフトには参加せずにいることは可能ですが出来るだけ参加ください。
注意点2:万が一リストの持ち馬が尽きてしまったときはその場で追加していただくことになります。いない方は後回しにされ、後日指名されていない馬の中から選ぶことになります。
提出リストに鍵かけたい方はどうぞー。

参加者一覧(2021/05/31更新)

1部

前年1部1位:ikur
前年1部2位:kokuo_
前年1部3位:sweep611
前年1部4位:kohi_k2 ※繰り上がり
前年1部5位:yuta0210 ※繰り上がり
前年2部1位:samdare0
前年2部2位:karasi_gj
前年2部3位:chabata_k
前年2部4位:black_altair
前年2部5位:maybaelectric ※繰り上がり(13427P)

2部

前年1部6位:shadow_rockin7 ※繰り上がり(13349P)
前年1部7位:niftyheart
前年1部8位:urisan_uma
前年1部9位:j_relaunch
前年2部6位:ryz
前年2部7位:americanbosss
前年2部8位:airedale
新規参加:sripura
新規参加:katuryoku
新規参加:sunnydayturf

2021年度から不参加が発生したため、各順位が繰り上がりました。繰り上がりの結果として前年1部6位と前年2部5位の比較はmeibaelectricさんの勝利となったため、1部昇格が決定しています。

ウマ娘勢が推しの子孫に課金する14の方法

留まることを知らないウマ娘ブーム。アニメ化当時はどうにも受け入れられなかったものの、アプリのデキの良さはパワプロダビスタに青春を捧げた身としてはドンピシャすぎたので、すっかり毎日育成の日々。ドラクエウォーク、FGOウマ娘にモンハンライズで、貴重な子育ての隙間時間の奪い合いな今日この頃。実際プレイしてみて、大ブームも納得なのだが、最近は裾野拡大の影響か、負の側面もネットを賑わすようになってきた。正直過去の競馬ブームに比べれば、圧倒的に収支はプラスだとは思えども、少しでも悪い話は防げるに越したことはない。というわけで、ネットの片隅に「推しの子孫に課金する14の方法」を書き留めておくことにした。重曹ちゃん報われると良いよね。

要約

1. 馬券を買え
2. リアルイベントはルールを守れ
3. 金があるなら馬を買え

本文

推しの子孫を少し知りたい

1. 土曜はテレ東、日曜はフジテレビを見る(課金ランクD)

・まずリアル競馬に触れるならオールドメディアといえど、まだまだ強い地上派。ビギナーなら、まずは土日に見られる中央競馬からということで、無難にこちらの2番組をチョイス。実際の競馬は朝10時から16時半くらいまで各競馬場2〜3×12R程度が行われてるわけだが、こちらの番組を15時くらいに見てもらえれば、まずは重賞、メインレースの観戦は可能。今は春のG1シーズン。ウマ娘でもお馴染みのオークス、ダービー、宝塚記念ももうすぐそこで。

2. 公式アカウントをフォローする(課金ランクD)

・この時代に地上波?SNSで情報を摂取させろ!派にはJRA公式の競馬ビギナー向けアカウント。メインレースの結果やキャンペーンの紹介があるので、とりあえずフォローしてみましょう。Twitterサービス開始当初は、競馬について触れるアカウントなんて数が少なかったから、一般人をブログに紹介してたなんて時期もあったんですけどね(Twitter老人会
twitter.com

3. JRAの公式サイトをみる(課金ランクD)

SNS情報では断片的で困る!出馬表を見せろ!ここまで来たら、あなたも立派な競馬ファン。まずは公式サイトにアクセスしてみましょう。公式サイトであるがために、いわゆる予想印は載っていないものの、G1レースの傾向、出馬表、レース結果、動画閲覧が可能。
www.jra.go.jp

4. 馬券を買う(課金ランクS〜C)

・競馬はスポーツですか?ギャンブルですか?答えは両方あるから楽しくて深い。あなたが20歳以上ならば、試しに100円でも馬券を買ってみよう。馬券を買うそれこそが競馬にとって、普遍の課金手段。馬券が売れてはじめて、馬主も生産者も騎手も調教師も、競馬に投資できる。馬券売上が下がった競馬場が廃止された場合、現在において復活される可能性はほぼ0。100円でも馬券を買ってくれることが、あなたの推しの子の活躍の場を広げるのです。初心者が買うなら、単勝複勝、それから選んだ2頭が1〜3着に入れば当たるワイドあたり。もちろん何を買っても自由ですが、単勝だったらフルゲートでも的中確率は5%以上。あなたのそのSSRの排出確率は何%でしたか?ただ1つ気をつけて欲しいのは、同じ1万円を突っ込むにしても、最初は1レースに突っ込むのではなくて、1日かけてじっくり楽しんでな。
www.jra.go.jp

推しの子孫の活字情報が欲しい

5. Gallopを読んでみる(課金ランクD)

・そろそろもう少し推しの子の情報が欲しくなってきた。来週の重賞はどんな馬が出るんだろう。活字情報を摂取したい。サブスク全盛のこの時代、もちろん生き残っている競馬雑誌はサブスク対応済。あなたがDマガジンや楽天マガジンに課金しているのであれば、火曜日に購読可能になるのが週刊Gallop。まずはこちらから始めてみてはいかがだろうか?もしもっと硬派な週刊誌が読みたいのであれば、コンビニで競馬ブックを買ってみてもよい。スポーツ新聞コーナーにある緑のやつです。

6. 優駿を読んでみる(課金ランクC)

・馬は綺麗だ、可愛い。そしてスポーツとしての、血統ロマンを知りたいんだ。そんなあなたにはJRAが発行する(強い)競馬月刊誌「優駿」。今ならKindle Unlimited対応しているので、サブスク的にも勧めやすい。オフィシャルブックだけあって、内容は重厚かつ長大。いまどきこんな金も時間もかかりそうな誌面構成保てるのも。馬券が売れてるからですね。

7. 競馬新聞を買う、スポーツ新聞でもいい

・競馬はギャンブルだ。目の前のレースで何が勝ちそうか教えてくれ。ギャンブルとしての側面に惹かれたのであれば、競馬新聞を買ってみるのも悪くない。もちろん予想がそのまま当たるわけではないが、競馬予想をするのに当たって、競馬新聞というフォーマットは確かに情報が詰まっている。専門誌が高いと思うなら、東スポやスポーツ新聞でもよいぞ。ちなみに競馬新聞もGallop系なら競馬エイト競馬ブック競馬ブックが存在する。もちろん他の競馬新聞でもよい。

推しの子孫に課金したい

8.グッズを買う(課金ランクC)

・キャラに課金したい。グッズが欲しい。そちらが欲しいならばターフィー通販クラブ。現役G1馬のぬいぐるみもネット通販で購入可能。一部の人気馬以外のぬいぐるみは再版しないことが多いので、少しでも気になる馬がいるなら早めに購入するのが吉。
shop.prc.jp

9.引退馬助成事業に寄付する(課金ランクB)

・溢れ出るこのぐしゃぐしゃになった情緒をダイレクトに課金したい。もし推しがまだ存命ならば、もしくは推しの子の未来に課金したいなら、競走馬の余生に課金するという手段もある。有名どころでは下記の2つ。もちろん他のクラウドファンディングもある。賛否が分かれるものの、ふるさと納税という手段もあるので、普段の返礼品目当てにプラスアルファしてみるのもよいいかもしれない。ばんえい競馬にも寄付可能。
rha.or.jp
www.thoroughbret.org

推しの子孫に会いたい

10. 競馬場に行く(課金ランクC)

・コロナ禍の中では、ワクチンが行き渡るまでは正直オススメしない。せっかくステイホームで提供できる娯楽として競馬があるのだから、出来る限りは在宅競馬を楽しんで欲しい。それが今の競馬に対する最大の応援になると思うので。とはいえ、情勢が落ち着いたら、是非実馬を見て欲しい。まずは近くの競馬場に遊びに行ってみるところが第一歩。中央競馬でも地方競馬でも競馬場と名のつくところであれば、必ず楽しめる。まあ初心者は中央競馬大井競馬場あたりをオススメするけど。広い空、眼前に広がるターフ、フライドチキンにビール。乗馬や馬車などが出来る競馬場もあるので、是非公式情報を確認して、コロナ禍が落ち着いたら、競馬場で馬と握手(許可されているイベントのみです
jra.jp

11. 牧場見学(課金ランクB)

・競走馬のオフショットを見たい。わかる。インターネットに上がっている写真も動画も魅力的だからね。だが少し待って欲しい。競馬ファンあっての日本競馬。その言葉に何一つ間違いはないのだが、競走馬を生産、育成する牧場にとって、直接的に競馬ファンは客ではない。ブームとなって、客が来てくれれば潤う他の業界とは全く持って違うルールが存在すると言うことだ。どうしても牧場に訪ねてみたい、そうであれば、まず競走馬のふるさと案内所にアクセスして欲しい。繁殖シーズンでなければ、牧場の好意の元で見学可能な牧場がある。ここで注意しないといけないのは、各牧場に問い合わせはNGだということ。ハッキリ言えば、多くの牧場関係者にとって「競馬ファンに削くリソースは無駄でリスクでしかない」。その感覚が良いか悪いかという点については、議論を残すところではあるが、厳然たる事実として競馬ファンは直接牧場にメリットをもたらす存在ではないと思われていることが多いと言うことだ。もちろん受け入れてくれる牧場も多々あるし、個人的にも良い体験をしたことはあるが、その点を肝に銘じて、牧場見学のルールは熟読して欲しい。
uma-furusato.com

推しの子孫のパパになりたい

12. POG(ペーパーオーナーゲーム)(課金ランクC)

・既に完成された競走馬よりも未来のダービー馬を推したい。そんな気持ちが芽生えてきたら、身銭を切る前に始められるのがPOG。デビュー前の競走馬を選んで、ダービーまでの獲得賞金を競うシミュレーションゲーム。ダービー翌週から新馬戦が始まることから、実は今が始めるベストタイミング。通称赤本だったり、青本だったり、大学受験の過去問みたいな名前で呼ばれている、POG本を買うと、デビュー前の競走馬の情報やグラビアが手に入る。当然ながらペーパーオーナーという言葉通りに、シミュレーションを楽しむゲームなので、本物のパパ気取りとかした日には、メチャクチャみっともないので、その辺はお気をつけを。なんで課金ランクがDじゃないんだって?チョコレートはおやつです。

13. 一口馬主(課金ランクA)

・架空のオーナーじゃ納得できないところまで沼に浸かったら。一般人最後に落ちる沼がそう一口馬主。あくまで馬主ではなくて、「金融商品として、競走馬に出資する」形となるので、こちらもあくまで馬主気分を味わう趣味ではあるものの、出資馬は牧場でしかるべき手段でマナーを守れば段違いの距離で見学可能。勝てば上手くいけばウイナーズサークルで口取りにも同席できるのだから、「馬主気分度」は段違い。もちろん月々のカイバ代も納めればならないので、課金額も段違い。400分の1なら数万円から、40分の1ともなると最低50万円〜最大300万円くらいの初期投資額。40口のデビュー戦は本当に楽しいよりしんどい。いいかい学生さん、シルクやキャロットをいつでも出資できるくらいになりなよ。それが人間偉すぎもしない貧乏すぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ。

14. 1頭持ち(課金ランクS)

・今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありません)が、過去2か年いずれも1,700万円以上あること。継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること。そうすれば自分の所有馬をウマ娘にすることも可能。でも例え関係者と親しくなっても、不正受給を指南してはいけないよ。馬に罪がなくても、競馬ファン天皇賞勝ち馬に微妙な感情を抱くことになるからね…。
www.jra.go.jp

おまけ

以下、お気持ち。まあだいたいTwitterに書いたこの辺なんだけど。

とにかく競馬ブームが起きれば、競馬の本質を捉えてない批判だの、競馬ファンの幻想を押しつけるなだのの批判が起きて、キャズムを越えたタイミングでバカによる関係者凸が起きるというのは、もう歴史的にも何度も繰り返されている現象。個人的には今回関係者に凸したバカよりも、自分たちが競馬にのめり込んだタイミングでも存在したバカのことを知らない振りして、新規やコンテンツを叩く方が嫌悪感がある。ダビスタだって、何が起きても公式に注意喚起なんてした記憶はないし、マスコミだって事案が起きてからしか問題にしてなかったでしょという気持ちが強い。

というのも、日本競馬においては、圧倒的な競馬ファンの存在に裏打ちされた売上と競馬のエンタメとしての地位が、周回遅れだった競走馬を世界レベルまで引き上げた原動力だと考えている。更に言えば、何かあればギャンブルとして白眼視され、売上が落ちれば廃止に追い込まれた競馬場も数多く見てきたわけで、とにかく新規ファンを途絶えさせずに、競馬の価値を世間に認められるように攻めも守りも注意し続けないと、今の日本競馬が続く保証はどこにもない。だからこそ、競走馬や関係者に迷惑をかけないというルールを守った上であれば、どんな楽しみ方をしたってよいし、それこそオフィシャルに参拝可能な競馬場の馬頭観音青いバラが供えられていても、現場に迷惑がかからないならそれでいい。あとで恥ずかしいとは思うけどね。

正直、アニメは未だに未見だし、アプリ上でのスペシャルウィークサイレンススズカの関係性には全く共感できないし、エルコンドルパサーの魅力はいまひとつ描けていないし、ライブにはあまり興味持てないし、何よりゴールデンウィークイベントでグラスワンダーにスポット当てないのは納得いってないけれど、それでもタイムライン上で競馬に興味なかったアカウントが競馬の話を始めた衝撃と感謝は非常に大きい。とにかく嫌いなら嫌いで、距離を置けばいい話でしかない。大きな意味でコンテンツを殺す行いと言論はマジで止めて欲しいなというお気持ちです。

追記

早くも誤読してそうな文章を見つけたので、追記。ここまで読んでいただければわかると思うが、「過去にもあったから、今回起きても見逃すべき」でではなくて、「過去にも繰り返された事象だから、せめて理解のある既存ファンは啓蒙すべし」というのが発言の主旨。嫌いなものは嫌いだろうし、擬人化、娘化云々はさておき、企画発案時のリスペクトのなさを考えたら、万人受けされないのは当然のコンテンツだろうなという感覚はある。それでもなお擁護に徹するするのは競馬産業の脆弱性の危機感が拭えないから。馬券が売れなければ、行政にお取りつぶしされるのは、もちろん、例え中央競馬だって社会に敵視されたら、いつ日陰に戻されてもおかしくない。実際潰れて二度と戻らなく競馬場を散々見てきたわけで。だからこそどんな形でも競馬が社会に受容されるなら、全力でサポートするべきだし、そのためには誰が何と言おうと、古参が障壁になってはならない。

まあただ20年くらい経つと、寺山修司の「競馬が人生の比喩ではない、人生が競馬の比喩なのだ」という名言がじわじわと刺さってくるところもあり。色々な解釈はあれど、「人は競馬を語るときに、競馬を語ることで自らの人生を語ることから逃げられない」という個人的な理解は、昔は今ひとつ実感なかったが、段々と重みを増してくる。それだけに「競馬に関わる嫌い」はともすれば他の趣味以上に、魂に刻まされてしまうわけで。色々言葉を紡いだところで、そこまでわかり合うことは所詮不可能なことは肝に銘じつつ、それでもなお書き残すのは、もうインターネットで20年競馬に言及する上での矜恃みたいなものなのですよ。

新年のご挨拶とポジショナルフットボール実践論書評

あけましておめでとうございます。仕事と育児に追われて、ブログは年に数回の更新、Twitterは週末中心という生活が続いていますが、コロナ禍の状況はまだまだ続くと思われますし、インターネットの繋がりも程々に大事にしていきたいと思います。本年もよろしくお願いします。

さて、もともとはフロンターレ天皇杯を制覇し、中村憲剛の美しい物語が最良のフィナーレを迎えたことを何か書こうと思っていたのですが、年末年始に積ん読していた渡邉晋のポジショナルフットボール実践論を消化し、いたく気に入ったので、フロンターレに感じた想い中心の書評に内容を変更して、新年最初のエントリとします。

発売当初から話題となった本書、噂に違わぬ面白さだったのは間違いない。ベガルタ仙台での「5レーン理論の発見」とその練習内容は非常に興味深かった……のだが、何より読み終えて思ったのは、ここで書かれた苦悩は2014年以降のフロンターレがいつ直面してもおかしくなかった(いや、していたのかもしれない)ということ。理想を追い求める指揮官。具現化されるためのトレーニングと選手の成長。一方で入れ替わる選手と、対戦相手の対策。対策に帯する対策の中で、理想と現実の狭間に揺れて、微修正を図る中で抜け落ちる理想。戸惑う選手。細部は違えど相馬監督時代に起きてしまったであろうし、風間監督時代にいつ起きてもおかしくなかった。何より鬼木監督が4年間タイトルを獲り続けることが、とんでもない偉業であることを再認識させられたというのが読み終えての感想であった。本書を踏まえて、改めて感じたフロンターレの強みと2021年の課題を記してみる。

第一に感じた強みは個人の利益とチームの利益を一致させることを当たり前にできたということである。チームを強くするためにポジショナルプレーを筆頭としたチーム戦術が必須なのは間違いない。現代のサッカーで個人戦術特化で勝ち点を積み続けるのは、非現実的な話であろう。一方でゴール前、そして対策の対策に対して結果を出すためには、個人戦術の強化がなければ、頭打ちになる。しかし本書で書かれているとおり、クラブチームで出来るトレーニング時間には限りがあり、トレーニングで行ったことしか試合で表現することもできない。限られた時間をショートカットする方法は2つしかない。「量でクリアする=お金で時間を買う=個人orチーム戦術に長けた選手を補強する」もしくは「質でクリアする=個人orチーム戦術の練習を同時に行う方法論を確立する」である。

フロンターレにおいて、本来両立しがたい後者が成り立っているのには、風間八宏を招聘して、「個人の利益とチームの利益を一致させる」をチームに浸透させる成功体験を積めたことが大きい。風間八宏の代名詞である「止めて蹴る」は一部に揶揄されることもあるが、本質はその技術論ではなく、個人戦術の行き先にチーム戦術、その先に得点があることをチームの共通理解とできたことなのではないだろうか。「勝利←得点←主体的に相手を崩す←チーム戦術の向上←前提となる個人戦術の向上」までがシームレスに繋がる成功体験。これは風間監督時代にチームに植え付けられた最大の遺産であろう。試合に出るためのチーム・個人戦術に対する明確な基準があること当たり前となったことで、2020年に鬼木監督が戦術の転換を図った中でも、そのための個人戦術に選手が前向きに取り込めたのではないかと思われる。

そして上記の成功体験を積めた理由は4つ。当時のJリーグが今ほど戦術でなかったこと、風間八宏の胆力がバケモノだったこと、フロントがブレなかったこと、そしてバンディエラである中村憲剛がその方向性を受け入れて先導したということであろう。全てが叶ったタイミングだったからこそ、個人戦術向上と勝ち点が紐付き、成功体験を積めたように思われる。本書の書かれた苦悩はいつフロンターレに襲いかかっても不思議ではなかったわけで、そこで崩れなかったのは外部環境、指揮官、フロント、ピッチ上の選手の全てが噛み合った結果といえよう。

第二に感じた強みは4年間タイトルを獲り続ける鬼木監督のトレーニングにおけるバランス感覚とマネジメント術である。これも先ほど述べたとおり、本書にはいかにクラブチームというモノが繊細で、トレーニングの内容によって、容易にバランスが崩れて、「角を矯めて牛を殺す」ことになるかが生々しく語られている。容易に思いつくのは2017年のフロンターレである。マイナーバージョンアップと語られがちではあるが、これまで理想を追い求めていたチームが守備に力を入れた瞬間、過去の遺産がいつ失われてもおかしくなかったということを本書は教えてくれる。鬼木監督が新戦力を融合させながら、初タイトルを獲ったということは、「前任者の遺産に守備を上乗せした」で済まされる偉業ではない。

そして更に凄みを感じるのは2020年のフロンターレの変化を生み出した覚悟である。理想と現実、シーズン中における変化の難しさ。再三の言及となるが、極端に振り切ったチームのバランスを見つけて、チームをまとめ上げることだけでも偉業である。にも関わらず、同じ監督がシーズンを通して理想に殉じて、さらにチームに最多勝ち点をもたらしたのである。本書を読み終えて、理想を貫く難しさとバランスを取る難しさを理解すると、改めて両方を成し遂げたということは、ちょっと信じがたい事実のように思える。正直2020年の新体制発表会でGMが鬼木監督を名将と持ち上げたときは、「凄い褒めるなー」くらいに感じていたが、改めてその凄さとフロントの慧眼には恐れ入ると言うしかない。

一方で2021年に目を向けると本書で示唆された「アンカーの重要性」には不安を感じざるを得ない。2020年のフロンターレにおいては、前半は田中碧、後半は守田がアンカーをパーフェクトに勤め上げたことが躍進の要因となった。移籍が確実視されている守田が抜けて、田中碧も夏以降の去就は不透明。「国内でアンカーを担える人材は……」と言及されているとおり、新戦力と若手も成長に期待するといっても、2020年と同じことは難しいであろう。ただ2017年、2018年に見せた鬼木監督のバランス感覚をもってすれば、更なるバージョンアップも可能だと期待したいところである。

以上、フロンターレに関する気づきを中心に感想を書いてみたが、とにかく本書はJリーグの監督の面白さと難しさが詰まった良書であり、戦術に興味がないサポーターにも是非読んでみることを勧めたい一冊である。ついついピッチ上で起こっていることで優劣を語りたくなるが、ピッチで起きることは全てピッチ外で生まれて育まれていることを、痛切に感じる内容であった。最後に1つ。本書で具体的に言及されているフロンターレの記述は「守備の巧さ」だけである。いやホント数年前には考えられなかったわ……。