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競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

J1サッカースタジアムの芝の種類と管理方法をまとめてみた

今年の夏の猛暑は様々なところに影響したが、サッカースタジアムもその影響を大きく受けたニュースが散見された。特にこれまでピッチの状態の良いイメージのあったデンカビッグスワンスタジアム等々力陸上競技場の状態悪化は、なかなかにインパクトのあるニュースであった。そういえば、はるか昔の話となるが、当ブログでは過去に競馬場の馬場研究特集を行ったことがある。

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そこで今回はサッカースタジアムに関するピッチの整理を行ってみた。約20年ぶり!の芝調査コラムをどうぞ。

サッカースタジアムのピッチの種類

天然芝

  1. 寒地型芝
・競馬場で言うところの洋芝をベースにしたピッチ
。主な品種はケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラスなど。チモシーなどとあわせて、放牧地に撒かれる品種としても有名。
  2. 暖地型芝
・競馬場で言うところの野芝をベースにしたピッチ。
競馬場で野芝の品種と言えばエクイターフだが、サッカースタジアムで使われるのはティフトン419やセレブレーション、シーショア・パスパラム改良型など。

ハイブリッド芝(上記の天然芝に人工芝をあわせた芝)

  1. 打ち込み式(ステッチ式)
・天然芝に人工芝繊維を9−18cm打ち込む。地上部は11−20cm。人工芝の割合は5%以下。
人工繊維が芝の根と絡むことで強度が増加。すり切れにも強い。排水性が向上する。
  2. カーペット式
・底面にベースの基布と一体となった人工芝を敷き、その上に床砂を乗せて、芝を播種する。地盤から4−4.5cmの基布層と6.5cmの地上部。人工芝はの割合は5%以下。
人工繊維が芝の根と絡むことで強度が増加。張り替えが容易。すり切れには少し弱い。

基本的には上記の4パターンのどれかがサッカースタジアムに採用されている。ただし暖地型芝の天然芝ピッチは、競馬場と同様に冬の間は寒冷型芝をオーバーシードすることで、芝を緑に保ち、保全していることが多い。

J1サッカースタジアムの芝管理状況

札幌ドーム

天然芝/寒冷型芝
品種:ケンタッキーブルーグラス3品種、ペレニアルライグラス
工法:巻き取り型
・北海道ということもあって、札幌、函館競馬場と同様に寒冷型芝オンリー。ドームということもあって、巻き取り型で芝の張り替えを行っている。
https://www.sapporo-dome.co.jp/dome/hirobajournal/2023/04/03/7689/

カシマスタジアム

天然芝/暖地型芝
品種:シーショア・パスパラム改良型
工法:巻き取り型芝
・暖地型芝でオーバーシードを行わないのは実はカシマスタジアムだけ。ただし歴史が浅いため、今後オーバーシードに替わる可能性もありそう。シーショア・パスパラム改良型を採用しているのも唯一。
https://number.bunshun.jp/articles/-/830124

埼玉スタジアム2002

天然芝/寒冷型芝
品種:ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラス
工法:植え込み型
・本州のサッカースタジアムにしては珍しい寒冷地型芝。ただしピッチの中に温水・冷水を流す地温コントロール施設があることで、ピッチが保たれていると思われる。
https://www.stadium2002.com/stadium_4.html
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/148576/saisutasiba_siryou3.pdf

柏スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
・詳細不明。柏はそういうとこだぞ。

味の素スタジアム

ハイブリッド芝(打ち込み式)
・詳細不明。最近変わってる。
https://mainichi.jp/articles/20190802/k00/00m/050/170000c

等々力陸上競技場

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:ティフトン419/インターメディエイトライグラス(ペレニアルライグラスとイタリアンライグラスの交配種)
工法:植え込み型
・いつもピッチ状態が良いイメージだった等々力競技場だが、今年は芝管理に苦戦した様子。今年から等々力競技場改築を踏まえて管理が「川崎とどろきパーク株式会社」に替わったとのことで、湘南造園の支援の元で芝の張り替えを実施。
https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2023082500058-spnaviow

日産スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:ティフトン419/ペレニアルライグラス
・経緯があって、わかりにくかったが2019年のラグビーW杯に向けて、いったんハイブリッド芝を採用したものの、日本陸連の検定を継続するために、天然芝に戻した模様。ハイブリッド芝だったころはカーペット型を採用していた。
https://www.nissan-stadium.jp/stadium/sportturf_type.php
https://www.nissan-stadium.jp/stadium/sportturf_hybrid.php

ニッパツ三ツ沢球技場

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:ティフトン419/ペレニアルライグラス
https://www.nippatsu-mitsuzawa.com/outline.html

レモンガススタジアム平塚

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
・詳細不明だが、湘南造園が担当していることもあるので、恐らく等々力競技場と同じ品種と思われる。

デンカビッグスワンスタジアム

天然芝/寒冷型芝
品種:ケンタッキーブルーグラス・ペレニアルライグラス・トールフェスク
・現在大問題となっているデンカビッグスワンスタジアムは寒冷型芝のみ。新潟競馬場が暖地型芝で夏に素晴らしい馬場状態を保っているだけに、正直寒冷型芝が採用されていることには衝撃を受けた。積雪地帯であることから、寒冷型芝を採用していると思われるが、今後ますます厳しくなる日本の夏を埼スタのような地温コントロールなしに乗り切るのは難しそう。早々に暖地型芝にオーバーシードに切り替えるべきではないだろうか。
https://www.denka-bigswan.com/guide/outline.html

豊田スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:コウライシバ/ライグラス
工法:ビックロール工法
・2023年11月に行われる世界ラリー選手権のために、一時的に芝を剥がして舗装するらしい。芝管理担当者だったら発狂しそうなイベントである。
http://toyota-stadium.co.jp/images/stadiumlife_plus_summer_2020/pageindices/index3.html#page=3

サンガスタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:セレブレーション
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/041600178/?P=3#:~:text=京都府は芝生の,を1.2m高くした%E3%80%82

パナソニック スタジアム 吹田

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:不明
https://reibola.com/column/post2086/

ヨドコウ桜スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:不明
https://www.cerezo-sportsclub.com/news/?id=104080

ノエビアスタジアム神戸

ハイブリッド芝(打ち込み式)/寒冷型芝
品種:ケンタッキーブルーグラス・トールフェスク
・以前は芝状態の悪さで有名だったノエビアスタジアム。ハイブリッド芝になって、多少マシになった気がするが、結構滑る選手が多くて怖い印象。
https://www.kobe-np.co.jp/news/odekake-plus/news/detail.shtml?news/odekake-plus/news/pickup/201802/10985223

ベスト電器スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
品種:不明
https://www.midorimachi.jp/images/book/160531173228747.pdf

駅前不動産スタジアム

天然芝/暖地型芝にオーバーシード
種:ティフトン419/ペレニアルライグラス
https://www.city.tosu.lg.jp/soshiki/12/1150.html

以上が、2023年のJ1チームのホームスタジアムの芝事情となる。このように眺めてみると、本州においてはやはり暖地型芝ティフトン419にペレニアルライグラスをオーバーシードするのが王道と言えるとであろう。そう考えると、現状のデンカビッグスワンスタジアムはそもそも寒冷型芝を採用しているところに難点があるため、行政も一体となった改善が必要となると思われる。あと西に行くほど情報が少なかったのは謎。地域性だろうか?

ともあれ競馬場ほどの広さはないとはいえ、サッカースタジアムにおいては屋根などの日照、通風の問題も存在するため、芝生の管理は難しいことに変わりはない。今後荒れたピッチでの試合に遭遇したら、頭の片隅に本記事を思い浮かべて、荒れ馬場の原因と管理者の苦悩にも思いをもっていただければ幸いである。