【第74回東京優駿】歴史が変わった瞬間、牝馬のダービー制覇
またも後手に回ったがダービー回顧。
歴史が変わる瞬間を見るということはこういうことか。歴史的名牝の誕生を祝う初夏。6年連続の観戦となったダービーは、過去のどのダービーよりも勝者を称える暖かい拍手に包まれた2007年のダービーとなった。新スタンドが出来て、だいぶゆとりが生まれた印象の東京競馬場。昼ごろに到着すると事前のオッズではフサイチホウオーは1.6倍。正直予想以上に人気が集中して嫌な雰囲気を感じる。ゴール前の階段で観戦位置を決めると、あっというまに返し馬。注目のフサイチホウオーはかなりテンションが高め。というか精神的に切れてしまっている印象。これは危ないなと思うと、一方ヴィクトリーは返し馬をせず。そういや皐月賞もそうだったなと思いだすが、目の前で見るとやはり相当な違和感。落ち着かない気持ちでゲートインを迎えた。
レースは皐月賞馬ヴィクトリーの出遅れからはじまった。カツハルは何かするかと思ったら、まさか出遅れとは。どよめきに包まれるスタンドを尻目に今度は外から進出。ヴィクトリーはここで完全に終わってしまった。あーあーやっぱりダメだったかと思いながら目で追った先には、こちらも力みが伝わる走りのフサイチホウオー。なんだか落ち着きのない展開になって、先が読めなくなる。そして1000m通過が60.5。これは遅い。しかしヴィクトリーが終わった以上、ホウオーを意識した運びになり動けない馬群。何がなんだかわからないなと思っているうちに、大ケヤキを過ぎる18頭。ここでターフビジョンに大写しになった馬の手ごたえに驚いた。ウォッカである。唸るような手ごたえを感じつつ、直線にはいってもう一度ホウオーに目をやると完全にいっぱいいっぱい。そしてホウオー終了確認した横目を突き抜ける馬が1頭。ウォッカだった。一瞬で先頭に立つ(ように見えたんですよ)と後は独壇場。歓声というより、驚愕のどよめきのスタンド。ゴールした瞬間、過去のどのレースよりも、ディープインパクトの走りよりも突き上げるものがある自分に驚かされた。これが歴史が変わる瞬間なのか・・・。ゆっくりとウイニングランをするウォッカ&四位を迎えるスタンドはこれまで競馬場で味わったことのないほど暖かな拍手に包まれたものだった。ダービーの歴史が作り出した幻想の1.6倍を粉々にした瞬間。新たな歴史が刻まれた瞬間。皇太子殿下への一礼をぼんやりと眺めつつ、歴史が積み上げられる重みと、新たな歴史が積み上げられる重みへの感慨に耽ってしまった。
冷静に結果を振り返ると、やはりペースが遅かったこと、そしてウォッカの33.0という上がりが目を惹く。ヴィクトリーがハナにいけなかったこと。ホウオーが自分から動けるような状態でなかったことがペースが遅くなった原因であろう。そのためにフィジカルなスタミナよりも、精神的なスタミナを問われる一戦となったことが伺える。勝ったウォッカは道中はインできっちり折り合い、直線は外に出すという理想の競馬。唯一の牝馬の挑戦(による人気薄)というものが、レースの流れ云々よりも、自分の競馬をするということだけに集中することを可能にした。それが功を奏する流れとなったという意味では、事前に予想したときの牡馬牝馬のフィジカル差があまり問われずに、牝馬が勝つ可能性が高い展開になったことは確かだった。だがそれにしても直線の斬れ味の凄まじさは恐るべきもの。他馬を一瞬で置き去りにして、なおかつ最後まで伸びきった脚の長さは絶品。初の2400で潜在能力の全てが披露されたといっていいだろう。今後は凱旋門賞の挑戦が決定している同馬。精神的なスタミナという面では凱旋門賞に挑戦する能力は充分に持っている。あとはいかに向こうの馬場にあう走りに変われるかといったところであろう。鞍上は未定のようだが、四位でいってほしい気持ちが3割と、TOPレベルの現地の騎手をを押さえられるのなら、勝つための戦略としてはアリかなあといった気持ちが7割。まあ四位が乗るのならば、今すぐ四位はフランスに飛ぶべきなのは間違いない。
2着のアサクサキングスはマイペースでいったときのリファール系の強さを見せ付けた。この系統は距離云々よりも自分のペース、気分で走れるかが全て。前がかりを予想したために自分の競馬が出来るとは思わなかったが、この展開での好走なら納得だ。3着アドマイヤオーラは意外な好走。フィジカルなスタミナを問われなかったのが大きいのかもしれないが、ここで勝ちきれないのがサンデーサイレンスとアグネスタキオンの差なのかと思わなくもない。やはりベストは2000だろう。フサイチホウオーは精神的に切れてしまっていて勝負にならなかった。父系の難しさが本番で出てしまったのか。立て直しを期待したい。ヴィクトリーも幼さが出てしまった。有力馬2頭は精神的な脆さというウィークポイントに負けてしまった形。ダービーを勝つには完成度が足らなかったとしかいうしかない。
◆レース後のコメント
◇1着ウオッカ
※四位騎手 最高の気分です。もともとナーバスなところがあるし、大舞台で唯一頭の牝馬でもあって、少しイレ込み気味でしたが、いかにリラックスして走らすことができるかを頭に置いて、気持ち的には男馬だと思って乗りました。内枠が当たったので道中はロスなく運べたし、直線もうまくいいところに持ち出せて、抜け出してからももう必死で追いましたね。ダービー出走が決まった時、勝つ可能性を秘めている馬だし、いいチャレンジだと思ったけど、本当に嬉しいね。今後は海外も視野にありますし、一緒に頑張っていきたいです。
◇2着アサクサキングス
※福永騎手 状態が凄く良かったので色気は持っていたし、一発狙っていました。この馬には外枠も良かったからね。ポジションは気にしないでこの馬のペースで競馬をしようと思っていたが、うまくペースが作れました。直線半ばでも脚いろは鈍ってなかったが、勝ち馬の末脚が上でした。この馬の力は出し切れたし、やり残したことはない。
◇3着アドマイヤオーラ
※岩田騎手 道中は流れに乗れて思った通りの競馬ができました。追い出してからの反応も良かったけど、直線で一頭になってフラッとしてしまいましたからね。勝った馬とは馬場の内外の差もあると思います。距離は気になりませんでした。