【第48回宝塚記念回顧】古馬の底力をみせつけた春のグランプリ
牝馬として64年ぶりのダービー制覇を為しえたウォッカを筆頭に例年以上に多士済々がそろった今年の宝塚記念。だがこれだけのメンバーが揃ったからこそ、3歳牝馬が一番人気というのは荷が重すぎた感は否めないものだった。ボロ株さんが戦前に述べていた通り、「挑戦者を王者の立場で迎えるハードルの高さ」というものは並大抵の能力、運では乗り越えることはできない。確かに競馬をスポーツとしてみたときに、ウォッカに夢はみたくなる気持ちはあった。だがスローの瞬発力勝負で結果を出してきた同馬が、ハイペースのロングスパートレース必至、かつ道悪競馬の、古馬&混合初挑戦では、外しの呼吸と考えるのが博打としては当然の選択であろう。
残念なことに結果としてこの予感は的中してしまった。事前の不安要素に加え、スタート直後にぶつけられ、かかったところで前に馬を置けないウォッカは3角まで掛かり通し。一瞬伸びる構えを見せたところが最後の抵抗というパフォーマンスとなってしまった。それでも勝ち馬から1.4秒差の8着という結果そのものは、キャリアを考えれば悲観すべき内容ではない。ただ気性面での不安を見せてしまったのは、今後に難しさを残したのは凱旋門賞を考える上では怖いところ。精神面でのケアがデリケートな牝馬ということは忘れてはならず、経験値がそのままレベルアップに結びつかない女の子の難しさを陣営がどう修正するかは見守りたいところだ。
勝ったアドマイヤムーンはといえば、ここが国内G1初制覇という宝塚記念のキャラを読んだ見事な勝利。しかも前述のキャラは手薄になりがちなと枕詞つくことの多いこのレースとは思えないメンバー相手なのだから価値があるだろう。ただしこれで天皇賞秋に向けてとなると、逆に嫌いたくなるのはひねりすぎか。というのも、この鮮やかな勝ちっぷりをみると、京都記念での走りのよさを含めて考えると、非根幹距離でのロングスパートレースに適性を見せすぎてる感があるからだ。以外に東京2000の適性は注意深く検討する必要があるのではと思ってしまった。
2着メイショウサムソンは前走の充実振りをみれば、納得の好走。ただ適性的には文句のない条件であっただけに、ここで勝ちきれなかったのはこの馬の何か足りない感を埋めることができなかったなあというのが個人的な印象。ともあれ凱旋門賞に向けては力が程よく抜けたステップを踏めそうな雰囲気ではある。陣営は不安だけど。◎に推していたポップロックは3着。武豊の意地に期待したのだが、ムーンに先着されるとはなんだかなと。コメントの上位2頭が強かったというものを見て、果たして彼の騎手生活のうえで、かつてのお手馬に賛辞を送る場面があったのだろうかと思うと、時代の移り変わりを感じなくもない。ダイワメジャーは適性云々よりも、安田記念では持ちこたえて、ドバイの疲れがどっと出てしまった形に。やはりあの勝利の代償は大きかった。
◆レース後のコメント
◇1着アドマイヤムーン
※岩田騎手 1週前の調教をつけた段階から、乗りやすくて相当な能力がある感触は掴んでいました。だから道中は馬を信じて無理せず追走ができましたし、直線も早目に抜け出してやめるのを注意しながら仕掛けられました。期待していた通り、瞬発力の凄い馬。これだけのメンバーが揃ったレースで勝てて本当に嬉しいです。
◇2着メイショウサムソン
※石橋守騎手 前を射程圏に入れて走っていた。結果的に早目早目のレースになったけれど、あれが持ち味だけにね。アドマイヤムーンと一緒に行って、負けたのだから仕方がない。勝った馬は凄かった。馬場はもう少し乾いていた方が良かったけどね。
◇3着ポップロック
※武豊騎手 いい展開だったけどね。具合が良かったし、一発を狙っていたけど、前の2頭は強かった。追いつかなかったよ。他が苦にする分、パンパン馬場よりはこんな馬場は良かったと思うけど。