【第12回秋華賞】レース前から勝敗が決していた3歳牝馬のフィナーレ
春の実績馬がそのまま出走してきた秋華賞。字面のメンバーをみると3歳最強馬決定戦というに相応しい出走表、しかし実際は調整過程に不満を残す馬が多数いる状態でのレースとなった。その結果として、勝ち馬に全てがそろい、負けた馬はレース前から負けてしまっていた3歳牝馬のフィナーレとなった。勝ったダイワスカーレットはアンカツがトライアルで手の内を見せずに結果を残した流れから、G1では見事にその能力を出し切っての勝利。スタート直後からレースの流れを支配、この馬の長所である先行力と末脚をフルに発揮する最高の流れに持ち込んだ。12.3-10.4-11.5-12.2-12.8-13.6-12.4-11.3-11.1-11.5という急ー緩ー急のラップ、かつ縦長の展開では後ろの馬が追い込むのは不可能。ダイワが勝つべくして、勝った流れであった。このような流れを生み出したのは、前走の余裕のある走りぶりだろう。前走を含むアンカツの見事なエスコートがダイワを勝利に導いたといえる。
一方のウォッカは前走宝塚記念を使った精神的反動から勝ちに行く競馬をできない状況。ダイワレベルの相手に対して、レースの流れにフィットせずに自分の競馬をするだけで勝つのはあまりに困難であった。とにかく敗因は「宝塚記念を使ってしまったこと」に尽きる。凱旋門賞を目指すという意味でも、秋に備えるという意味でもチャレンジャーであるはずの馬が、チャンピオンとして歴戦の古馬の走りを受けるというのはあまりにも大きなハードル。その宝塚記念での捩れた立場が「自分のペースで競馬をしないと、能力を発揮しきれない」ウォッカに自ら動く競馬をさせてしまい、その反動で逆に秋華賞という舞台で勝つことよりも「自分の走りを思い出させる競馬」を優先せざるを得ない状況に作り出してしまった。これでまだ内枠だったらよかったのだが、外枠ではレースの流れを無視した競馬をするしかなかったといえる。次走は変わってくると思うが、せっかくのダイワと決着をつける舞台でこのような状況の競馬をせざるを得なかったことは残念。戦う前から負けてしまっていた。
3強対決と言われていた最後の1頭、ベッラレイアはそもそも秋華賞というレースには不向きな馬。ローズSで書いたとおり、限定された条件で自分の持つ脚をキッチリ使うことしか出来ないベッラレイアにとって、その限定された条件と全く正反対の性格を持つ秋華賞を勝つ可能性は極端に低かった。ただエリザベス女王杯では好走条件とレース条件がピッタリあってくる。次走の上がり目は見込めるだろう。
3着、4着馬の隙をつけこんだのがレインダンス。とにかく鞍上が言うとおり全てが嵌った形での好走。ピンクカメオはスローで差せる馬ではなかった。
◆レース後のコメント
◇1着ダイワスカーレット
※安藤勝騎手 スタートが決まってスッと行く形だったけど、行く格好を見せていた馬がいたので無理はしなかった。自分のペースで運べれば必ず弾けてくれると信じていたからね。ローズSの時もそうだったけど、本当に強い内容。外から他馬がきていたけど、まだ手応えに余裕があったくらいだったからね。
◇2着レインダンス
※武幸騎手 G?ではなかなかないことだけど、今日は全部がうまくいった。もうちょっとだったけどね。春の段階から、秋になればとは思っていたけど、ひと夏越して良くなっていたし、春の実力差を考えればよく頑張っているよ。
◇3着ウオッカ
※四位騎手 宝塚記念の時は折り合いを欠いてしまったし、そういうレースだけはしたくなかったから、ジワッと行かせたけど、前半だけ少しムキになったくらいで、あとはスムーズに走ってくれた。ただ、結果を考えると、もう少し前目の位置でも良かったんだろうね。その中でよく追い上げてきてくれた。最後は久々の分もあって伸びあぐねてしまったけど、次は必ず強いウオッカを見せてくれるはず