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百万円と苦虫女にみる逃げ続ける勇気。あと蒼井優萌え

百万円と苦虫女

百万円と苦虫女

蒼井優ヲタとしては見逃せない久々の主演作品「百万円と苦虫女」を見てきた。結論から言えば、蒼井優補正で73点、補正なしで67点。☆は補正ありのほうでつけた。まあ蒼井優ファンは間違いなくみたら満足できる。映画としては結構いいところもあって邦画をみる楽しみは味わえる感じだが、名作になるのはちょっと足りない佳作な作品。

この映画の魅力は積極的な自分探しに陥らせずに、ちょっとひねた感じを漂わせながら、転々としていく鈴子が「逃げ続ける姿」。他人と距離をとりながら、苦笑いを浮かべながら、周りを避けるように逃げ続ける鈴子の姿は、良い感じでダメ人間要素を刺激されて、心地よい。そしてキャラクターが蒼井優にピッタリはまっている。蒼井優にはストレートなヒロインよりも、ひねた役をやらせた方が映えるのは間違いない。また女性監督ならではのシーンの柔らかさも特徴的。結構蒼井優のアップシーンが多いのだが、その撮り方が非常に女性的なんだよね。特に何度もアップで顎のラインのところがあるんだけど、これが胸きゅん。苦虫女だけに眉間に皺を寄せている絵も多いのだが、それもまたグっとくるんだよなあ。蒼井優ファンはこれだけで元は取れる、間違いない。いや、ここまで蒼井優のことしか書いていないが、ホントにこの作品は蒼井優じゃなかったら存在し得ない作品だと思っているので、蒼井優を絶賛するのは仕方ないんだ。うん、仕方ない。

とはいえ、脇役も結構しっかりしていて、農家の一人息子役のピエール瀧とか見事だし、森山未來の大学生役も安心感がある。最初から最後までちょっとユルい雰囲気が漂っているが、がんばりすぎない感じの柔らかさが邦画を見る上での楽しみではあるし、そういう意味では非常に満足度が高い作品。ストシーンは結構予想できるけど、納得がいく感覚で拍手。全体的にビターな感じで甘くないけど、それがいいね。自分にダメ人間要素がある人は見に行っても良いんじゃないかな。名作になるには足りないところはネタバレも含むので下記で。

以下、ネタバレありの批評。

この作品、序盤、中盤は凄くいいのに、終盤でもったいないことになっている。この映画は、「逃げ続ける鈴子が逃げ続けた結果、成長していく物語」なわけなのだけど、そのラストシーンへの持っていき方で減点したくなるのだ。

ひとつは映画の作りとして、起承転結の転→結の部分をサボっていること。中島との恋の終わりから鈴子は「逃げ続けるだけでは何も変えることは出来ないと気づき、自分の足で立って歩こうと決意する」わけだけど、そのメッセージを「弟への手紙」という形で独白させてしまっている。これは映画としてはサボりでしょう。しっかりと絵でその変化を描くべきだと思う。もっとも重要なシーンをそのままの台詞に頼ってしまうのは、映画の完成度を低くさせてるだけなんだと思うんだよなあ。序盤中盤と鈴子をあれだけ丁寧に描いているのに、一番演出が欲しい場面でサボってしまっては・・・・同じようなことは最後の中島が追いかけるシーンも同様で、何でそんな重要なことをアイツに言わせるんだよ!と画面に突っ込みたくなった。そこは言わせないでキャラクターを自然に動かさないと・・・。ラストシーンが悪くないだけに、非常にもったいない印象。他にもいくつかあった映画としての作りの甘さがなければ名作の予感だったんだけどなあ。

もう一つが鈴子の弟の決意。これは信念の問題になるので、見る人によって評価は変わるところなのだけど、いじめについては僕は「とりあえず何でも良いから逃げ続けて、とにかく生きていくこと」をもっと積極的に肯定するべきだと思っている。確かに「無目的に逃げ続けるだけでは何も変えられない」というのは事実なのだけど、一時的にならば、「生きるためにとりあえず逃げ続けること」にもっと寛容になってもいいと思う。そういう意味で、「鈴子の置かれている立場」と「鈴子の弟が置かれている立場」を同じ立ち位置において、「逃げないで自分の足で歩くこと」への成長を描くというのは引っかかるんだよなあ。鈴子の選択は納得がいくけど、弟の選択は納得いかないw このへんは監督は感じたことを、描いたわけだろうし、凄く個人的な感想ではあるんだけどねえ。

とはいえ、十分鑑賞するに値する良い邦画だったと思う。蒼井優可愛かったしw 蒼井優は本人の良さを生かしきった主演作品に恵まれていなかっただけに、これは普通に当たりだわ。