先日アメリカンオークスに挑戦したダンスインザムード。この馬は社台・サンデーサイレンス・藤沢和雄という、現在の日本の競馬界を代表する三者が手を組んだ最高のサラブレッドといえる。それだけに日本のとどまらず、海外に挑戦するべき馬といえ、今回こそ負けはしたが今後も是非遠征を続けて欲しいところである。
ところでこの三者がそろったのは過去に2回、バブルガムフェローとハッピーパスしかない。しかしサンデーと藤沢という組み合わせはどの調教師との組み合わせより多い(2001年生まれまでで41頭、2位は森師37頭、3位山内師31頭)。この組み合わせ、あるキーワードで関連付けることができる。それは「馬なり調教」。この両者は調教において、強い負荷をかけずに、多くの本数をこなすことでその素質を開花させるという手法において有名である。どの雑誌や媒体でも、このキーワードは両者を紹介する上で語られることが多い。ではこの両者がタッグを組んだ際に、どれだけの破壊力を持つのか。今までの藤沢厩舎のサンデー産駒の獲得賞金上位を並べてみると、
1位 バブルガムフェロー
2位 ダイヤモンドビコー
3位 スティンガー
4位 ゼンノロブロイ
5位 ハッピーパス
6位 ウインラディウス
7位 コイントス
8位 ダンスインザムード
9位 ウインデュエル
10位ウインシュナイト
どのようなイメージを持つだろうか、管理人は意外に抜けた馬がいないなと感じてしまう。あれだけ「馬なり調教」と喧伝され、さぞかし相性抜群と思いきやG1馬は3頭しかいない。3頭出していれば十分と言われるかもしれないが、そのうちスティンガーは2歳G1勝ち馬である。バブルは3歳時に天皇賞を勝ったものの、それ以後一流馬にはいつも少し足りなかった。確かに重賞馬は多いが、どうにも一流半というイメージの馬が多い。もっとG1級の馬がいてもいいのではないだろうか。これを東に良い馬が入ることが少ないからという理由だけで片付けるのは少し無理があると考える。何せサンデー管理頭数一位である。ここでサンデー産駒の獲得賞金上位10頭を並べてみると、
1位 スペシャルウィーク(白井)
2位 ステイゴールド(池江)
3位 バブルガムフェロー(藤沢)
4位 トゥウザヴィクトリー(池江)
5位 サイレンススズカ(橋田)
7位 ネオユニヴァース(瀬戸口)
8位 ビリーヴ(松元茂)
9位 エアシャカール(森)
10位ゴールドアリュール(池江)
こうして並べてみるとスパルタとは言わないが、それなりに速い時計を出してる厩舎が多い。確かに馬なりでの調教は大きい厩舎では藤沢厩舎くらいしかやっていないというのもあるのだろうが、それにしてもG1レース前はきっちり追いきってる厩舎が目立つ。これをどう見るかというと個人的にはいかに「馬なり調教」が素質を潰さずに伸ばすといっても、それは成長の初期段階の育成や2,3歳時の話であり、完成したあとは強い負荷をかけて調教することでこそ、サンデー産駒の闘争心は発揮されるという仮説を立てたい。手元に各サンデー産駒のG1直前の調教データがないので確証は得られないが、上に挙げる10頭の多くはG1レース前は好時計を出していたと記憶する。
ではここまで述べたことで何が言いたいかというとダンスインザムードのこれからは巷で思われるほど安泰ではないのではないかということである。3歳G1最初の桜花賞こそ素質の違いで勝ちきったが、オークスは連対すら出来なかった。アメリカで2着に入ったが相手はかなり弱い。これから先他馬が完成して、強い負荷をかけてG1に出てきた際、果たして今までの馬なり調教で勝てるのか。さらに3歳牝馬最後の秋華賞はそのコース形態上極めてタフなレースになることが多い。京都内回り2000mは切れ味だけで勝てるコースではない。もしも藤沢師が今後もダンスを馬なりでしか調教しなかった場合、その素質を全て引き出すことが出来ずに、ダイヤモンドビコーやハッピーパス、スティンガーレベルの馬に落ち着いてしまうのではないだろうか。これからダンスインザムードは休養に入るとのこと。帰厩するのは秋になるだろう。帰厩後の調教欄をそのような視点で注意深くチェックしたいところである。