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【第40回ジャパンカップ回顧】日本最高のレコードホルダーによる美しきラストランと日本競馬の夢の続きと

三冠馬3頭の対決として、日本競馬史上のベストバウトとも言われた2020年のジャパンカップ。これまで幾度も名馬が跳ね返されてきたG1の7勝目の壁を破ったアーモンドアイか。ディープインパクトに遂に現れた最高傑作であり無敗の牡馬三冠馬コントレイルか。史上初の無敗の牝馬三冠を達成した令和の天才少女デアリングタクトか。全馬無事にゲート入りできるか緊張の一週間は大過なく過ぎ、11/29の出走時刻を迎えることとなった。

ウェイトゥパリスがゲートを苦労したのはご愛敬。世紀の対決は2年前の2着馬キセキの大逃げから始まった。引退レースとなるアーモンドアイはいつも通りの先行策。デアリングタクトはその後ろを外から追走。コントレイルは中段後方外目のポジションとなった。キセキは速いラップを刻むところを、後続集団は離れて追走。隊列は大きく変わらず直線へ。キセキが止まるのと尻目に抜け出しを図るアーモンドアイ。コントレイルも外から追い出しにかかる。デアリングタクトは進路を探しながらの進出。ラスト200mを過ぎたところで先頭は完全にアーモンドアイ。デアリングタクトとカレンブーケドール、外からコントレイルが猛追するも、アーモンドアイが悠々と府中の直線を先頭で駆け抜けて、勝利。三強対決はパーフェクトレコードホルダーによる見事なラストランで幕を閉じた。

勝ったアーモンドアイは前人未到のJRAG1の9勝目。獲得賞金も歴代1位となり、東京芝2400のレコード記録2.20.6とあわせて、まさに日本競馬最高のレコード保持者として現役引退。終わってみればやはり本馬の強みは獲りたい位置を獲れる操縦性の高さと、ハイペースを追走しても末脚が衰えない巡航能力。「先行できて、他馬を寄せ付けないラップを刻める馬が最強である」という競馬の前提を、地のままで行くようなその走りが、日本記録を次々と塗り替えたのも納得である。今日も決して2年前や前走よりもピークの状態とは思えない臨戦過程であったが、その競馬の巧さと早さは後輩三冠馬2頭に隙を与えることはなかった。鞍上ルメールともども現代日本競馬で必要な要素を全て兼ね備えた競走生活であったと言えよう。この一戦で引退しての繁殖入り。産駒がまた日本の競馬に彩りを添えてくれることであろう。

2着のコントレイルはあまりにも正攻法な競馬での2着。正直なことを言えば、アーモンドアイの後ろから勝てる確率は限りなく低かったわけで、ガチンコ対決という観点では物足りない騎乗だったと言わざるを得ないだろう。一方でコントレイルにとっては初めての「正攻法で負けても次に繋がる真剣勝負」の場であったこと、そして前走の激闘から短い間隔で出走であり、限界以上の走りを引き出すのは来年に負担をかけてしまう可能性がある状況であったのも確かなわけで、多少はエクスキューズがつくのも仕方ないことなのかもしれない。物足りないとはいっても、体調不安を抱える中で初の古馬との対戦での2着を確保。父ディープインパクトも3歳の有馬記念は取りこぼしてしまっているわけで、騎乗に注文をつけたくなる部分はあるが、ここはベストバウトを実現させた関係者のプライドに敬意を表したい。

3着のデアリングタクトは相手関係から言えば初めてのキツイ競馬。直線でコントレイルに被された進路を探すこととなったのは、鞍上の経験の差。カレンを押さえた底力は見事だが、臨戦過程と斤量を考えると人馬共に今回は力負けといった印象。今回高い負荷の競馬を経験したことで人馬共に来年の飛躍に期待したいところ。4着カレンブーケドールは出負けが勿体なかったが、いつももう一押しタイミングも相手も悪い競馬が続く。どこかで勲章を取って欲しい馬ではあるが、来年のエリザベス女王杯あたりが最大のチャンスか。5着グローリーヴェイズも力は出し切ったことで、今回のジャパンカップのレベルが高いこと示せたことは何より。

アーモンドアイの美しいラストランで幕を閉じた2020年のジャパンカップ。繰り返しになるがアーモンドアイには、やはり先行できて高速ラップを刻めることの価値を教えられた。サンデーサイレンスの最高傑作はディープインパクトであることは間違いないが、やはりサイレンススズカの産駒が見たかったと思わせた晩秋の府中のターフ。希代の名牝はここで現役生活を終えるが、3歳三冠馬2頭の現役生活は来年も続く。特にコントレイルにはかつて父ディープインパクトがそうであったように、敗戦を糧として古馬となって更に凄みのある競馬を見せてくれるように期待したい。その先にはきっと父ディープインパクトにも、アーモンドアイにも成し遂げられなかった日本競馬の悲願達成が待っている。