競走馬の能力を語る難しさ
昨今の競馬を語る言説の中では、もう既に単一の能力値による比較は意味をなさない。レーティングのようなものはあるが、これはあくまで「レース結果からの序列」を表したモノであり、各馬の能力を表したものとはいえない。背景には競走馬の全体のレベルが上がり、能力のバラツキが小さくなったこと、競馬を巡る言説の熟成があるといえよう。では何と言うべきか。昔のダビスタのようなスピード・スタミナ・勝負根性・気性などの分け方をすら今となってはモデル化しすぎている。それゆえに「末脚がある」「スタミナがある」「底力がある」「長い脚が使える」「瞬発力がある」などの表現が乱立しているが、あくまで各発言者の気分次第という曖昧な使われ方をされている状況だ。ここでは今後の僕の競馬的言説を正しく理解してもらうためにも俺用語を説明しておきたい。
競走馬が持つ力
用語を定義するに当たり、2つの段階で競走馬の資質というモノにスポットを当てたい。まず1段階目として競走馬を単体の動物として捉えたときに各馬が持つ計測可能な資質。2段階目としてそのような資質が実際のレースではどのように求められかである。
まず1段階目について説明すると、フィジカル面では「体型(骨格・筋肉の付き方・各部位のカタチ)」「筋肉の質」「消化器系の丈夫さ」「心肺機能の強さ」などが挙げられるであろう。またメンタル面においては、「従順さ」「競争意欲」。これらの資質については他にも色々あるだろうが、このようなものは単体では競馬を捉えるというレベルでは意味をなさない。ではどのようにこのような資質がレースで必要とされるのかと考えてみる。
レースで必要な能力
ここから先は完全に筆者のこれまでの競馬経験から導き出した定義となる。ちなみに影響を受けているのは金満血統王国、コースの鬼、各種の馬体解説本、JRA総研の研究結果などである。特にJRA総研の研究結果は実は無料でWEBで読めるので、これから書く内容がピンと来ない方は是非読んでいただきたい。とりあえずはココにおいてある競馬ブックのコラムの過去ログを読むといいかも。マジでこの内容だったら3000円くらいでも本になったら買うわという内容。さてそれらを踏まえて、1つのレースは次のような資質が必要だと考えている。
スタート直後
→ゲート反応速度、0からの13秒台あたりまで立ち上がりの加速力、その後騎手の指示通りのペースを落とせる賢さ・走行フォーム
道中
→13秒前後(酸素摂取量が最大に達する速度)で走る際に無酸素運動的なエネルギー源を使わずにいられる有酸素運動の強さ
→無駄のない他馬が側に居ても崩れない走行フォーム
→騎手の指示に従え・他馬を恐れない賢さ
最後の直線
→無酸素運動中心のラストスパートにすばやく切り替えられる筋肉の質・走行フォーム
→全力疾走の際の最高速度
→無酸素運動の持続力
→無酸素運動の限界が達した後の失速を防ぐ精神力・有酸素運動の余力
→他馬に競り勝つ闘争心
個人的競馬用語
上記を踏まえて、基本的には下記のような用語を使っている。
ダッシュが効く
→ゲートからの飛び出し反応速度が早い、加速力がある
スタミナがある
→13秒前後のペースで効率よいフォームで走り、有酸素運動能力が高く、無酸素運動の割合を小さくして走れる
瞬発力がある
→騎手からゴーサインが出た際にすぐに加速できる気性・カタチ・筋肉の質をしている
斬れ味がある
→末脚の最高速度が速い。「瞬発力がある」を含んで発言しているときもある。
長い脚が使える
→道中の走行効率が良く、無酸素運動の余地を多く残せるなどの理由でトップスピード(無酸素運動)を維持できる
底力がある
→無酸素運動を続ける力がなくなって、脚が上がったときでも一気に減速しない有酸素運動の余力・精神力がある
パワーがある
→不整地の馬場でもエネルギーロスが少ない走りを行うことが出来る。