BrainSquall

競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

2008年読んでおきたい競馬本ベスト5プラス1

年末年始特別企画第1弾(第2弾以降は未定)として、この正月に読んでおくべき2008年競馬本ベスト5プラス1をあげてみる。べ、別にホッテントリ狙いでも、アフィ狙いでもないんだからねっ!

競馬の業の深さ、怖さを思い返すために読んでおきたい

落馬脳挫傷 -破壊された脳との闘いの記録-<石山 衣織>

※2007年2月に落馬、脳挫傷を追った石山繁騎手。その闘病生活を支え続けている石山騎手の妻、石山伊織さんの手記。とにかく「生々しく壮絶」の一言に尽きる。落馬し障害を負って引退した騎手がどうなるのか、それは「サラブレッド達のその後」以上に、表に出てこなかった事実である。あの福永洋一騎手でさえ、引退後の生活はほとんど報道されていない。もちろんかつてのスターが苦しんでる姿を見せたくないという、本人・周りの気持ちがあるのもその理由だろう。だが、報道されないからといって、存在しないわけではない。そこには本人と、その家族の必死の生がある。もちろん障害の程度、本人の状況もあるだけに、石山騎手のケースが全てに当てはまるわけではないが、競馬の業の深さは間違いなく伝わってくる。年に1回くらいはその業に思いを巡らせるのもいいのではないか。

それにしても闘病記としてのこの本書の生々しさ、息苦しさは何だろう。もちろん起因が競馬であるということはある。だがそれ以上に一つには妻である筆者の偽りない心情がそのまま記されていることがある。いくら家族とて、無償で介護しつづけられるものではない。「何故こんなことに」「どうして私だけが」というある意味普通の人間なら、当然持つであろう苦しみ、マイナス感情が隠すことなく綴られている。このことが読んでいる内に読者に同化していていき、非常に辛くなる。しかし何よりその辛さは後遺症がアイデンティティの喪失という、想像を絶する形で残ってしまったということにより増幅される。「記憶障害」「アイデンティティの喪失」これはテーマだけなら、極めて特異すぎて、逆に安易に語り尽くされているものである。だが、これが実際の闘病記、さらにいえば、周りの介護する人間から語られるときどうなるのか。これはもう辛い。キツすぎる。リアルに「人格が変わってしまう恐怖」、さらにそれを支えなければならない重さ。頼れる夫、父だった人が変わってしまった姿を目の当たりにするのだ。正直本にできるまで、持ったのは本当に石山騎手の周りの人が支え続けてきたからだろう。

なお周りの人間といえば、本書を藤田騎手なしでは語ることはできない。評価は色々あれど、こういうときの彼の男気は本物なのだなあと思わされた。リハビリ中で記憶が定かでない石山騎手が藤田騎手の名前を出しただけでおとなしくなるというエピソードも含めて。なお石山騎手は現在ゆっくりと以前の自分を取り戻しつつあるとのこと。もちろん全てがというわけにはいかないのかもしれないが、それでも少しでも回復が進むことを祈りたい。

親分がいなくても面白いモノは面白い

たいようのマキバオー 6 (6) (プレイボーイコミックス)つの丸

※名作みどりのマキバオーの続編。正確には2007年から連載は開始している。いやはや二世もの、続編ものはなかなか前作のイメージなどもあって、難しいと思うのだけれど、このたいようのマキバオーは文句なく面白い。マルスとかとは違うよ!全然違うよ!競馬自体はそもそも大河的な要素を持っているにも関わらず、意外に難しいのは、ある程度舞台が繰り返しになってしまうところにある。このたいようのマキバオーは一転して、舞台を地方に持っていってしまって王道からずらしたところが非常に上手い。もちろん前作のミドリマキバオーも決してキャラとしてのエリートではなかった。だが舞台を地方としたヒノデマキバオーはまた違う雑草魂を感じさせる。さらに諸処の設定もなかなか凝っている。例えばアマゾンスピリット。かつて地方の代表として、アウトローとしてカスケードに迫ったサトミアマゾンの血を引くこの馬を、逆に今作では南関東のエリートの位置にを持ってきているところは何とも心憎い配置である。いつか彼がアマゾンスピリット、さらにフィールオーライと戦う日はやってくるのであろうか。

厩舎経営が競馬ファン目線で素直に語られる希有な調教師本

開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント (競馬王新書16) (競馬王新書)<矢作 芳人>

※矢作調教師の文章の巧さ自体は既に競馬王でコラムを持っていた頃から折り紙付きである。そのため非常に読ませる本に仕上がっている。まあ目新しさ・タイトルほどのインパクトという点では、ある程度追っている人には物足りないところはあるが、ファン目線で素直に語る文章からは、師の現在の想いがストレートに伝わってくる。他の調教師本以上に、管理馬、厩舎運営の方針についても、ファン目線で語られているため興味深いところである。いつか、矢作師が特殊な調教師ではなくなる競馬界になることを夢見たい。

そろそろ脳内の競馬知識をリフレッシュしたら?コース編

何年血統をやっていても「当たる」からやめられない!―王様・田端到のJRAフルコース田端到

※まあスゲーってほどではない。だが金満ラーとして、最近の変わりつつあるコースのトレンドを押さえる基礎にはなるのが本書。鵜呑みにして馬券が当たるわけではないが、以前のコースイメージから抜けきれないそこのアナタにはオススメの処方箋だ。今度ダートの砂厚は9センチに揃えるというし、ホントちょっと目を離すだけでコースのトレンドは変わるから怖いよなあ。

そろそろ脳内の競馬知識をリフレッシュしたら?血統編

パーフェクト種牡馬辞典―産駒完全データ付き (2008→2009) (競馬主義別冊)田端到・加藤栄>

※こちらも毎年出てるので何をいまさらという感じではある。だが今年はついにサンデーサイレンスがリーディングから陥落。完全に時代は変わりつつある。いつまでもサンデーサイレンスを買ってればいい時代は終わったのである。上と併せて、そろそろ脳内の競馬知識をリフレッシュする意味でも、読み直して見ようぜ!ということで紹介。でも意外と短評当たるんだよね、これ。

番外編・読んだ瞬間壁に投げつけたくなる競馬本1位

G1の勝ち方―サラブレッド金言108藤沢和雄

※今日び、ググれば一瞬で誰でもわかるようなG1の小話を、もったいぶって語っているだけの本。元が週刊誌連載とはいえ、このクオリティの低さは異常。めでたく読んだ瞬間壁に投げつけたくなる競馬本1位の座につきました。ちなみに一般部門では恩田陸のpuzzleね。

以上、2008年読んでおきたい競馬本ベスト5プラス1でした。これを持ってBrainSquallの年内の更新は終わります。といっても、普通に競馬は週末から始まりますので、懲りずに頑張りましょう。2009年の期待はグラス産駒のクラシック制覇、天皇賞制覇。目標は馬券回収率140%(今年は130%でした)。あとはたぶん2009年内に100万HIT越えそうなので、もっと更新頻度をあげたいですね。せめて週3(ニュース2、回顧1)は最低ラインにしたいです。ではでわ、皆様よいお年を。