- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2006/01/27
- メディア: コミック
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サザエさんが嫌いだ。正確に言うとアニメ版のやつだ。日曜が終わりそうになるから、とかそういう意味ではない。あの笑顔につつまれた、空虚さが耐えられないのである。「当たり前の日常」が続くことを、さも当然のように演じているあの空虚さだ。「日常」は決して永遠に続くモノでも、タダで手に入るものでもない。人間は必死であがきながら、かろうじて平衡を保って「当たり前の日常」を手に入れている。いつ壊れるかもわからないモノをギリギリで守っているのである。しかしサザエさんの日常は決して壊れない。そこに描かれている創られた偽物の日常である。それを日曜の夕方に放送するという偽善的な態度、それを平気で日本中が見ているというメンタリティは想像するだけでもゾっとする。
「それでも町は廻っている」は「メイド喫茶(とは名ばかりの下町の喫茶店)でバイトする女子高生の日常」を描いたギャグマンガである。一見、天然の女子高生(とその周辺)を描いたゆるーいギャグマンガだ。たまーに宇宙人とかが出てきたりするが、決してセカイ系作品のように、日常とセカイを直接的に結びつけて世界を描いたりはしない。しかし決して「創られた壊れない日常」ではないリアリティが存在する。そこにこの作品の魅力がある。4巻にして2回もあるテーマが作中で取り上げていることはその象徴であろう。描けば必要以上に重くなりがちなそのテーマを、あえて軽く描き上げて、ギャグに混ぜ込んでいるバランスが、「当たり前の日常が続く奇跡」を鮮やかに浮かび上がらせている。もちろんギャグ自体もおもしろいし、キャラクターもなかなかに魅力的。メイド服姿のばーさんにはそれだけで衝撃w しかしそれ以上に「それでも町は廻っている」というタイトルに集約される作品のテーマを意識的に描きあげている作者には脱帽である。あとそれをナチュラルに僕に薦めてくるAmazonにはもっと脱帽であるw