ローエングリンという馬に感じるこの不可解な期待と失望。8歳で中山記念を勝つ姿を本当に見たかったのか。しかしそれは結局のところ、あの宝塚記念の好走を見てしまった僕の戯言なのかもしれない。
あのとき彼の走りっぷりに、あの馬の姿を重ねてしまった。気持ちよさそうに走る栗毛の逃げ馬。しかしその思いは本来のローエングリンの走りを失わせていくに過ぎなかった。不可解なローテーション、騎手選択、レース内容。気づけば彼はスランプに陥り、そして脚質転換してしまった。正直に言えば、僕には先頭を走れないローエングリンに何の感慨もわかなかった。たとえ好走したとしても。だから2007年の中山記念において、ローエングリンという馬に対する僕の完全に興味は失われていた。ゲートが開いて、ロケットスタートを決めた彼を見て、はじめて彼を意識し、驚いて画面の中を見つめた。久々に気持ちよさそうに風を切るローエングリン。いつ以来だろう、こんな走りを見るのは。そして直線並びかけられたところで、やっぱり無理か、と思わせておいてのもう一伸び。ああ、まるであのときの宝塚記念みたいじゃないか。独りごちた僕は、しかしすぐに夢から醒める。なんで8歳にもなって中山記念なんて勝ってるんだよ。後藤のインタビューを醒めた思いで見つめる。でもきっと、こんな期待が彼をここまで迷走させてしまったのだろう。そんな失望とも反省とも、復活した嬉しさとも違う感傷を抱きながら僕は思う。
サイレンススズカはもういない。
◆レース後のコメント
◇1着ローエングリン
※後藤浩騎手 この馬とのコンビは久しぶりだったが、まずチャンスをもらえたことを感謝したい。以前に乗っていた時にはつらいことも含めて、本当にいろいろな経験をさせてもらったが、いつも馬との会話を大事にしていた。今日は逃げるレースになったが、僕はこの馬のいい頃のイメージを思い出しながら乗っていたし、また馬の方もそのことを考えてくれていたのだと思う。今回乗って改めて素晴らしい馬だと感じさせられたね。
◇2着エアシェイディ
※伊藤正調教師 勝ったローエングリンと比べると、格の面では少し及ばない感じですが、この馬も確実に力をつけてきています。今日も直線の短いコースでしたが、キッチリと脚を使ってくれましたから。もう、信頼が置ける段階まできているし、あとはこちらがいい条件のレースを選んで、結果を出してあげるだけですね。
◇3着ダンスインザモア
※蛯名騎手 ゲートの中で頭を上げて、スタートを上手に出ることができませんでした。こうなったら、脚をタメて直線に勝負を賭けるしかないですからね。ちょうどいい流れになり、最後は素晴らしい脚を使ってくれたんですが、ゴール前の脚いろが良かっただけに、余計にスタートのロスが悔しいね。