BrainSquall

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【第47回きさらぎ賞】幻影を引きずる2007年クラシック

断然の人気を背負ったオーシャンエイプス。結果として4着に終わったわけだが、スター候補を必死で探すその周りの空気には、ディープインパクトの幻影をまだまだ競馬マスコミが引きずっていること実感させられるものであった。・・・というのは誰にでもわかることなので、これ以上は突っ込んでも仕方ない。しかし今回武豊「幻影」を引きずっているのを露呈してしまったことは、今後の競馬、馬券を考える上で触れずにはいられないことだ。

今年のきさらぎ賞のペースを見てみると12.8-11.3-12.3-12.9-12.4-12.1-11.3-11.4-12.3とアサクサキングスの逃げっぷりに反して、決して速い流れではなかった。これを後続が幻惑されてしまったというのはあまりに安易。ペリエはともかく、武豊ほどの騎手が実際のペースを把握しきれていなかったとは思いがたい。ここで注目すべき点は、たかだが1勝馬。まだまだクラシックに乗れるかわからない馬に乗りながらも、武豊が直線勝負で脚をはかる競馬をしてしまったということである。このような競馬は最近の3歳戦ではある意味見慣れた風景である。しかし、このような「クラシックを見据えた試し乗り」をこのような出走権の取れていない状況下でしてしまうことは、あまりにも騎手が(見てる僕らもかもしれないが)、サンデーサイレンスという幻影」に引きずられてしまっているということではないだろうか。

確かにSS産駒であったならば、「どれくらいの脚を使えるか」と「出走権を確保するために2着以内に入る」ということが両立した。なぜか。それは「あまりにもSS産駒のレベルが高かったためにクラシックとは常にSS産駒との戦いであったから」である。「SS産駒が非SS産駒よりも強い」という前提が成立していたといってもよい過去においては、他のSS産駒に勝つということがクラシックに勝つための条件であった。それがために「SS産駒の特長である直線での爆発的な末脚がどのレベルかということが、イコールその馬がクラシックで戦えるレベルか」という命題が成り立っていた。つまりペースだの、展開だのということは二の次で、末脚さえ通用するならばクラシックレベルの馬は最低の賞金は稼ぐことができたのである。

しかし今SS産駒はいない。SS産駒のいない競馬では「直線での末脚」が「クラシックを勝つための能力、賞金条件」を担保しなくなったのである。そのために今回のような本質的に前が有利な展開になれば後続は手も脚も出ないのは当たり前であった。ロベルト系のマヤノトップガン産駒にスローペースでの末脚勝負の競馬など実力を発揮する乗り方でも、能力を測る乗り方でもない。しかし武豊は「ここ数年のクラシックの戦い方」を踏襲してしまった。もちろん武豊オーシャンエイプスディープインパクトではないということは重々承知であったであろう。しかし「SS産駒でいないクラシックの戦い方」を頭でわかっていても、まだまだ咄嗟に対応しきれていないように感じる。共同通信杯におけるニュービギニングの競馬も同じ文脈で捕らえることが可能なのではないだろうか。

以前書いたそれでも武豊を中心に競馬はまわるほど武豊は今の競馬に対応していないとは思わない。だが、ことクラシックという点においてはまだまだ武豊に限らず、各陣営も対応しきれていないように思えてならない。今後SS産駒のいないクラシックは続いていく。このことにどのような競馬を騎手が、調教師が演出していくのか(その意味ではSSに毒されすぎていないアンカツや若手には注目だ)ということは非常に興味深い。ポストサンデーサイレンス時代はまだ始まったばかりである。

◆レース後のコメント

◇1着アサクサキングス

※武幸騎手 行けたら行って欲しいとの指示。他馬の様子を見つつ、いい感じでハナに。道中は遊んでいたが、仕掛けてからはスッと反応。あまり後ろは気にしたくなかったが、見るとかなり離れていたのでこのまま押し切れるんじゃないかと思ったね。急きょの乗り替わりだったが、本当にいい馬に乗せてもらった。

◇2着ナムラマース

ペリエ騎手 思った通りの展開だったが、3角で行こうとした時にちょっとズブさを覗かせた。それでも、ラストはしっかりと伸びてくれたし、能力のある馬だよ。

◇3着サムライタイガース

※安藤勝騎手 攻め馬ではフワフワする面があるが、レースではまっすぐに、しっかりと伸びてくれる。実戦に行った方が走りがスムーズだね。まだまだ、これから強くなって行く馬だよ。