BrainSquall

競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

東浩紀曰く、「もっとも純粋にイーガンの世界観や人間観が出ている」と語られる順列都市が去年再販されていたので、やっと読んだ。確かに小説としては、荒削りすぎる印象は受ける(彼の2作目の作品)が、彼のその後の作品にも通じる「アイデンティティとは何か」というテーマをSFを通じて語るという意味で迫力溢れる作品に間違いない。とにかく人間とは何か、自分とは何かを、僕が僕であり続けるために必要な要素とは何か、について突きつけられるね。所詮人間は記憶によってでしか、過去と自分が同一であることを確認できない。だけど、その記憶さえ本来あやふやなものであることを、すでに僕は知っている!君が君を担保していると無邪気に信じている、そのくだらない感情は、脳内物質の気まぐれでしかないのだよ!という叫びに駆られた。

ただちょっと小説としてはついていけない人は多数出そうな作品ではある。これまでイーガンを読んだことのない人にはオススメできない。想像力使いすぎという印象。僕にしては相当じっくりと時間かけて読んだのだけど、塵理論とかオートヴァースとか、いまだにピンと来てるかといわれるかといえばば微妙だし。アクロバティックすぎて、正直ついていけてないとこもあるから、そういう意味でこの本を完全に堪能した気がしないのだ。そういう意味では、もっとも純粋に世界観が出ているが、もっとも読者に世界観を突きつけるのは「しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)」のほうかも。初心者にはこっちのがオススメ。