BrainSquall

競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

海外遠征から見えてくる日本競馬にとってのターニングポイントとなった2006年

今年の海外遠征をまとめてみる<りあるの競馬日記>

2006年の海外遠征を振り返る<殿下執務室2.0 β1 >

海外遠征を振り返る <REVERY_L_ELEKTRA: Anotherside>

こっちに書く<うま(かもしれない)さいと>

【朝日杯FS】転換点を迎えた日本競馬を象徴する結果となった2歳G1<Brain Squall 【競馬ニュース&コラム】>

一足先に香港で終わった2006年の日本馬の海外遠征キャンペーンについて。結論から言えば、朝日杯回顧で述べたとおり、今年は日本競馬にとってのターニングポイントイヤーとなったといっていいのではないだろうか。それは言い換えれば、サンデーサイレンスの残した遺産を日本競馬がキチンと受け継いでいる証を残せたということであると定義したい。

振り返ればサンデーサイレンスの残した遺産は非常に大きなものであった。サンデーサイレンスが導入されなければ、日本競馬は世界から10年取り残されていたといっても過言ではないだろう。それは大きく分けて二つの面からである。一つは歴史的な種牡馬を自国に繋養できたことによるサラブレッドの能力自体の向上。そして能力向上、層の厚さの向上による海外遠征の人の経験値の蓄積である。

2006年はその2つの面において、その遺産を受け継いだ戦果を残したといっていい。前者においてはハーツクライディープインパクトによる2400m王道路線におけるパフォーマンス、後者はユートピアコスモバルクの海外における勝利があげられるであろう。しかしターニングポイントイヤーであるというのには、それだけでは足りない。2つの戦果を究極に象徴するのはデルタブルースメルボルンカップ制覇である。

ハーツクライディープインパクトの遠征は現時点における日本競馬最高傑作レベルの馬が、「日本馬として普通に欧州最高峰に挑む」というテーゼに対して、ある程度の結果を残した。確かに3着(失格)という結果は最高の結果とはいえない。ここで勝っていれば、ある意味日本競馬のアガリを示すことさえ出来たかもしれない。しかしエルコンドルパサーのような「欧州仕様」でも「外国産馬」でもない彼らが、人気の一角としてレースに挑み、その人気に恥じないレースをしたということは、ちょっと前までは想像さえつかなかった事実である。この事実はSSという血を手に入れた日本競馬がそのTOPクラスの馬においては、能力面において、世界の王道路線に対してもイコールに近いレベルにあるということを現している。

またコスモバルクダンスインザムード、またはアドマイヤムーンの2着という結果は、海外遠征という経験値をすでに日本の競馬人が充分に持っているという証に他ならない。日本においてはTOPとはいえない彼ら(彼女)が国内でのローテーションと地続きの海外遠征において、結果を出したという事実は、すでに日本産馬がどのレベルにおいても、海外に通用する可能性があるということだけでなく、人の面においても充分なレベルに達した結果、SSという化け物種牡馬を抱えた日本競馬界がそのポテンシャルを生かしてこれた証であるといってもよいのではないだろうか。

そしてその2つを併せ持った2006年の最大の戦果はデルタブルースメルボルンC制覇であると考える。日本の競馬の歴史と伝統を体現している3歳クラシック、しかも菊花賞を親子で制覇した馬であり、サンデーサイレンスの孫である彼が、オーストラリアの歴史と伝統であるメルボルンカップを勝ったという事実。それはサンデーサイレンスが残したサラブレッドの能力、競馬人の経験値の蓄積という2つの遺産を受け継いだ輝かしい勝利であるといえよう。そしてそれは、日本競馬のターニングポイントといってもいい事実だ。

このように考えるとサンデーサイレンスの導入そのものが日本競馬の一つ目のターニングポイントであったともいえる。そしてメルボルンカッブ勝利に代表される海外遠征のパフォーマンスにより、ブレイクスルーの先が見えた2006年はやはり日本競馬のターニングポイントイヤーであるといってもよいのではないだろうか。もちろんだからといって、日本競馬が次のステージで簡単にやっていけるというものではない。上記2つの面において、ディープインパクトが3着に終わってしまったこと、そして陣営のミスによる薬物失格という事実が起きてしまったことを考えると、あくまでギリギリ合格といったところだ。また日本競馬の抱える構造上の問題(地方競馬、馬産地、東西格差etc...)は何も解決されていず、せっかくここまで来た日本競馬をあっというまに後退させてしまう地雷はそこかしこに埋まっているのが現状だ。

しかし日本競馬が「ある程度の域に達したからこそ見えてきた「難しさ」@殿下」を顕在化させることが出来るステージまであがってきたのは紛れも無い事実だ(そういう意味で2006年のパート1国入りははかったようなタイミングではある)。ディープインパクトというスターホースの退場を残念がっている暇は無い。ターニングポイントイヤーを迎えた今こそ、日本競馬が抱えるポテンシャルと問題点を冷静に見つめ、ファンも主催者もこの先の舵取りを考えていかなければならない時期にきているのであろう。