BrainSquall

競馬ニュースを中心に、レース回顧、POG、一口についてのタワゴト。他にフロンターレとかアニメとか・・・でした。

日本ウマ科学会・第18回学術集会レポート・その1

11月28日に行われた日本ウマ科学会・第18回学術集会のシンポジウムに行ってきた。サンスポスポニチなどで様子が報じられているが、個人的なレポートを書いてみる。

シンポジウム自体は14時からだったが一般口演がはじまる13時ギリギリに到着。東大農学部の教室はディープインパクトのポスターが各所に貼られ、すでに椅子はほとんど埋まっている状態。ほとんどの人が所属に「JRA」「BTC」「美浦TC」など書かれているように関係者(友道調教師や騎手も来てたらしい)。1割弱くらい競馬ファンもいた。サンスポによると例年の5倍だったとのこと。

一般口演は「サラブレッドの腸内乳酸菌フローラ」「通年屋外飼育馬における安静時代謝量の測定」「多雪期の林間放牧地における北海道和種馬のエネルギー代謝量と採食行動」というお題。馬の呼吸成分の分析のための技術や、和種馬は雪が深いと移動しながら食べる量が減るぜみたいなお話でした。和種馬ってササ食べるんですね。ミネラルバランスがいいらしいよ。へー。

そして14時からシンポジウム。まずは進行役の方が「3分ほどVTRをごらんください」とのこと。大方の予想通りスクリーンにはディープインパクト菊花賞の映像が。何度も見たゴールシーンの後、約1名の妙なテンションの拍手があり、いよいよシンポジウム「スターホースの走りを科学する」がスタート。ここからは口演ごとにまとめてみる。

1、「真のスターホースとは」(野元賢一

我らが生ノモケンキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!ということで最初のテーマは日経新聞社の皆様ご存知野元賢一氏によるスターホースとは何か。「菊花賞での馬券が89.2%はディープ絡み」「サイエンス部門に一人場違いでスイマセン」という枕のあと、野元氏の独断と偏見で選んだ(本人談)歴代のスターホースを振り返りながら、その考察といった形。まずは書き起こし。実際あげられた馬と野元氏のコメントを載せてみる。

1)トキノミノル

・世の中に最初に認知された馬

2)シンザン

・三冠の年にノモケン生まれる。常に必勝を求められることの多い現在と違って、遊びが認められていた時代の名馬。

3)ハイセイコー

・ノモケン小学2年生。ダービーを負けたニュースが最初の競馬の記憶らしい。負けたことで人気があがった馬。高度経済成長の踊り場という時代背景で、初めて社会現象になった馬。

4)ミスターシービー

・TTG以降スターホースが出なかったJRAの「強い馬作り」というコンセプトが実を結びつつある中で生まれた三冠馬

5)シンボリルドルフ

・岡部騎手とのコンビが目立った。スターホースは海外を目指すべきという流れの端緒となった馬。

6)オグリキャップ

・バブルの寵児。クラシック未登録、オーナーを巡る話題などストーリー性に満ちた馬。武豊との関わり合いも注目されたところ。

7)ナリタブライアン

・競馬の転換点手前の最後のスターホース。個人的には今まで一番強い馬だと思ってるらしい。どこまでディープが迫れるか。

ここでいったん話を切ってまずはアイドルホースの条件についてコメント。オグリキャップハイセイコーに通じるのは負けていること。強すぎる馬は自己投影の対象となりにくい。またレース数が多く、露出が多いことも重要とのこと。ただ千切って勝つというのも魅力の一つではある。その意味で挙げられるのは

8)セクレタリアト

・千切って勝つという魅力を体現した馬。

ということになるだろうとのこと。そしてここ10年の競馬転換点についての考察。避けて通れないのはSSの存在。産駒数が多く、外れが少ないため全体の層があがる。その結果抜けた馬が減り、勝ち馬がコロコロ変わるようになるためスターホースが生まれづらくなった。また国際化が進み、三冠中心の体系も揺らいできた。そして

9)ディープインパクト

・出自の完璧さが目立つ。またファン気質の変化が伺える。頑張れば報われる的な世相を反映した自己投影の対象としてではなく、優れたアスリートとして評価され、ファンに支持されている。個人的に好感をもったNHKスペシャルを見ても、アスリートとしてのディープインパクトを追ったものである。なお番外として次の馬が。

10)ハルウララ

・競馬と関係ないところで無理矢理作り上げられた物語を背負った馬。ディープはこの馬とは当然違う。

最後に結論として、振り返ってみるとディープインパクトの人気には自己投影からアスリートへの憧れというファン気質の変化が見られる。そしてアスリートとして見られる以上有馬記念のあとディープが求められるものは当然海外遠征だ。JCをスキップしたことが大して問題視されなかったことからも、期待が国内ではなく、すでに来年予定されている海外遠征にファンの気持ちが向かっていることがうかがえるという締めで口演は終了した。

全体的には比較的おとなしめな内容。スターとして求められるものが自己投影の対象から、アスリートに対する憧れになったというのが要旨。個人的には三冠体系が揺らいでいる中で生まれた無敗の三冠馬はどう位置づけられるべきか。今後ディープがさらに競馬外にも人気を得ていくためにはどのようなパフォーマンス、JRAの戦略が必要か。つーかぶっちゃけ長距離軽視してるけどそこらへんどうなのよ。とか聞きたかったところではあるが、5時以降予定あり質疑応答も出られず。残念。とりあえず長くなったので続きは次のエントリで。